事実上の引退勧告、指名漏れにも負けず、BC群馬・奥村光一はNPBへ「ラスト1年、死にものぐるいでやってやる」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 だが、地元・静岡の友人たちはこぞって奥村を励ました。

「ユニホームを着られるのがうらやましいよ。プロに行ける可能性があるんだから」

 大学時代の仲間や家族も応援してくれた。奥村は腹を決める。

「ラスト1年、死にものぐるいでやってやろう」

【10キロの減量でスピードアップ】

 まずとりかかったのは、肉体改造だ。93キロあった体重を減量することにした。そこには奥村のこんな狙いがあった。

「去年はパワーで見せようという思いが強くて、体重を増やしたんです。でも、実際にNPBとの交流戦を戦ってみて『パワーではもっと上がいる』と感じたんです。このままでは自分をほしがる球団はないと思ったので、体重を落としてスピードを求めることにしました」

 10キロの減量に成功すると体のキレが増し、持ち前のスピードがさらに高まった。今季BCリーグでは31試合で17盗塁(盗塁刺1)をマークしている。

 打撃の意識も「引っ張って長打を狙う」から、「広角に鋭いライナーを打つ」に変わった。日本ハム戦で放った三塁打は、まさに奥村が理想と思い描いていた打球だった。

 いま、奥村は「NPBを目指す選手」から「NPBから求められる選手」へと変貌を遂げようとしている。

 奥村は最後に、語気を強めてこう語った。

「友人、家族の応援や、村山(哲二/BCリーグ代表)さんらリーグを運営してくださるみなさんのおかげで、僕は夢を追えています。自分ひとりだけではここまでこられなかったので、みなさんのためにもなんとかしてラストチャンスをものにしたいんです」

 力強い打球を弾き返す打撃、スピードアップした快足、外野からの強肩。武器はいくつもある。だが、人々の心を打つハングリーなプレー姿こそ、奥村光一という選手の最大のセールスポイントなのかもしれない。

【無料トークイベント情報 7月6日(木) 紀伊國屋書店・新宿本店】

菊地高弘×西尾典文 「2023年夏、プロ注目の高校球児は誰だ?」

夏の甲子園を目指す高校野球の地方大会がいよいよ開幕! 今年はどんな戦いが繰り広げられ、プロ野球のスカウトは、どの選手に注目しているのか? 『離島熱球スタジアム 鹿児島県立大島高校の奇跡』で福岡ソフトバンクホークス大野稼頭央(2022年ドラフト4位)ら離島の球児たちの奮闘を描いた菊地高弘氏と、「スカイA」ドラフト会議中継の解説者としておなじみの西尾典文氏をゲストに迎え、ディープな高校野球トークを展開していただきます。

60分ほどのトークのあと、質疑応答と菊地高弘さんのサイン会を予定しております。サイン会にご参加希望のお客様は当店にて対象書籍『離島熱球スタジアム 鹿児島県立大島高校の奇跡』(菊地高弘 / 集英社 / 税込1,760円)をご購入ください。イベント当日は会場でも販売いたします。 皆様のご参加をお待ち申しあげております。

【日時】2023年7月6日(木) 18:10開場 / 18:30開演

【会場】紀伊國屋書店新宿本店 3階アカデミック・ラウンジ

参加方法など詳細はこちらへ>>

  菊地高弘(きくち・たかひろ)/1982年生まれ。東京都出身。専門誌「野球小僧」「野球太郎」の編集者を経て独立。独自の切り口と取材力に定評があり、近著『離島熱球スタジアム 鹿児島県立大島高校の奇跡』(集英社)では離島の球児たちを鮮烈に描いた。「菊地選手」名義でリリースした『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット。他に『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)、『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)など著書多数。

  西尾典文(にしお・のりふみ)/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析を研究。専門知識を生かした分析力を武器に高校野球、大学野球、社会人野球からプロ野球まで幅広く精力的に取材し、野球専門誌、スポーツナビ、BASEBALL KING、AERA dot. などのWebメディアに寄稿する。全国各地のアマチュア球界を網羅した情報力は他の追随を許さず、CSテレビ「スカイA」のドラフト中継番組の解説者として欠かせない存在となっている。

プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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