関西大の有馬諒が大学ナンバーワン捕手の座へ ライバルには「自分より能力が高いのは明らか。でも最終的に勝てればいい」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

【極度の合理主義者】

 そもそも、代表候補合宿は有馬のコンディションが万全ではない事情もあった。夏場に右肩の関節唇を痛め、秋のリーグ戦中には股間に打球を受けて睾丸を2回にわたって手術している。肩を痛める前には「いい感じに投げる感覚をつかんでいた」と手応えを得ていたと有馬は振り返る。

「今は確率が低くても、全部のボールが進藤に負けているわけじゃない。まだ自分の実力不足なのは間違いないですが、悲観的に思うことはないと考えています。一番いいスローイングをどれくらいの確率でできるかが勝負ですから」

 高校時代からほぼ一貫しているが、インタビュー中の有馬は感情の揺らぎを一切表に出さない。プレー中も「感情を表に出すことはありません」と言いきる。たとえ思うようにいかないことがあっても、有馬は冷静に解決策を見つけていく。

 たとえば周囲と圧倒的な力の差を感じても、「できないことがあれば、できるようにすればいい」と目の前の課題克服に専心する。バッテリーを組む投手がリードの意図をくみ取ってくれなくても、「イラッとはするけど、人は人。その子にとってはできないことなんだな」と現実を受け止める。

 3年春のリーグ戦では、京都大が本来なら正捕手の愛澤祐亮をアンダースローの先発投手として起用する奇策を用いてきた。チームメイトの多くが戸惑うなか、有馬だけは「相手が誰だろうと、自分にできることをするだけ」と意に介さず二塁打を放っている。

 取材当初は「冷静でクレバーな選手だな」と感じていたが、深く掘り下げていくうちに「冷静すぎて怖い」とも感じた。そんな印象を伝えると、有馬は「昔はこんなんじゃなかったんですよ」と明かした。

「小中学生の頃は、もっと感情的にプレーするタイプでした。中学生の頃は典型的な反抗期で、試合中にふてくされた態度をとったり、うまくいかないとすぐ怒ったりしていましたから。でも、高校生になってから『自分は感情を出してもうまくいくタイプじゃないな』と気づいたんです。周りにはうまい選手が何人もいましたし、もっと謙虚に取り組まないと勝てないと思ってから、今みたいなタイプになりました」

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