冬の鍛錬と漢らしさが根底、盛岡大付の史上最強打線。ふさわしい呼称は、わんこそばかペンギンか...

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

---- これまでつくり上げてきた歴代の強打線と比べて、今年の打線をどう見ますか?

 盛岡大付の関口清治監督に尋ねると、想像以上の言葉が返ってきた。

「見てのとおり、体格面に関してはナンバーワンだと思います。それとゲームの流れを一発で変えられる子が何人かいますので、今までで一番脅威のある打線なんじゃないかと思います」

初戦の鹿島学園戦で先制の3ランを放った盛岡大付の平内純兵初戦の鹿島学園戦で先制の3ランを放った盛岡大付の平内純兵この記事に関連する写真を見る 盛岡大付といえば、これまでも数々の強打線を育成してきた。最速160キロを計測した直後の花巻東・大谷翔平(現エンゼルス)から5点を奪った2012年夏。身長165センチのスラッガー・植田拓を主砲に据えた2017年春夏。大船渡・佐々木朗希(現ロッテ)を秋の県大会で打ち破ってセンバツに出場した2019年春。NPBで活躍するような打者はいなくても、全国の舞台で数々の爪痕を残してきた。

 そんな盛岡大付で歴代最強の強打線が今夏、甲子園にやってきた。

 高校通算64本塁打の松本龍哉が1番に座っていることからも、そのレベルの高さがうかがい知れる。3番・金子京介は身長187センチ、体重93キロで高校通算56本塁打。4番・小針遼梧は身長185センチ、体重95キロで高校通算47本塁打。ともに巨体だけで相手投手をすくませる、迫力満点の布陣だ。

 8月16日、甲子園初戦・鹿島学園(茨城)戦に登場した盛岡大付はその強打ぶりをいかんなく発揮した。

 鹿島学園の好投手・薮野哲也の前に3回まで1安打に封じられたものの、4回裏に6番・平内純兵が3ラン本塁打を放って先制。6回には相手守備陣の乱れに乗じて4点を追加して、7対0で大勝した。

 殊勲者となった平内は、この本塁打が高校通算36本塁打。他チームなら主軸を張れる身長181センチ、体重85キロの左打者だが、岩手大会は不振のため決勝戦では先発メンバーを外れている。ベンチにも能力の高い打者が控えており、夏の大会期間中でも激しい競争が展開されている。

 平内の先制3ランについて語る、関口監督の言葉が象徴的だった。

「薮野くんのピッチングが粘り強くて、ああいう形(本塁打)じゃないとこじ開けられなかったと思います。一発がなければ、どう転んでいたかわからなかったので最高の先制点になりました」

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