巨人・原監督の流儀も吸収。アマ球界の名将となった元近鉄戦士の指導法 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Sportiva

── 価値観、倫理観の共有というのは興味深いです。

「これは慶応の監督時代から言ってきたことです。今ならENEOSってどういうチームでなければならないのか。全力疾走? 隙がない野球? それも重要だけど、アマチュア球界で見本となるチームでありたいと。中学生や高校生が見ても、学びたいと思ってくれるようなチームでありたい。それは試合のみならず、日々の練習態度や私生活にもあるんだと。それに相手に対してのリスペクトはもちろん、野球というのにどれだけ向き合っているかといったことも含めてです」

── ベストナインを3人出すというのも、すごく具体的です。実際、優勝するなら3人くらい大活躍しなきゃいけないと?

「そうした3人が出てくるためには、それぞれ技術的な課題を大会までに克服する必要があり、それが何かを問わなければならない」

── 昨今、アマチュアでも意識改革やメンタル面の強化は盛んと聞きますが、技術的な部分で何が足りないのかを一人ひとり問うていくのは珍しいのではないですか。

「どうでしょうね。よそのチームのことは詳しくわかりませんが、同じことを慶応の時からやっていて、そこには手応えを感じています。ただ厄介なのは、頭で理解させてもなかなか身につかない。要は時間がかかる。少なくとも僕の考えを理解してもらうには、最低でも1年はかかります。

 ENEOSには昨年のオフに就任したのですが、当初は時間のなさに絶望的になりました。それが今年、コロナの影響で練習はほとんど自粛になり、時間は有り余るほどあった。自粛期間に選手とミーティングの時間が増えたことで、僕の考えを少しは理解してくれたと思います。それがなければ、間違いなく間に合わなかったと思います」

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── 大久保監督の理想の監督像とは?

「慶応時代の恩師である前田(祐吉)監督はもちろんですが、揺るがないものがありつつも、新しいものも積極的に取り入れていく柔軟性を併せ持つということでしょうか。試合に臨むにあたっては、基本、選手に任せて自分は何もしないというのが理想です。自分の考えを理解してもらい、それを選手たちが実践できるようになっていてほしい。もちろん、プロの監督からも影響というか吸収させてもらっています。たとえば巨人の原(辰徳)監督の『チームが停滞している時に、監督はどう動くべきか』......というのはほんと勉強になります」

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