甲子園常連の強豪校が次々に敗退。「番狂わせ」はなぜ起こるのか? (3ページ目)
ある甲子園常連校は、大会前に厳しい練習を課し、選手たちを徹底的に追い込む。これにはその監督の持論があり、大会終盤に選手のピークを持ってくるひとつのやり方である。とはいえ、大会序盤は体が重く、いつものキレがない。そこに落とし穴が待っているケースも少なくない。
また、監督が選手に厳しい高校も要注意である。たとえば練習試合で勝利しても、できなかったことを叱責され、次々と反省点を指摘される。実は、積んできたのは"失敗体験"ばかりで、これでは選手は自信を持てない。
そしてもうひとつ、今どきの高校生にとって厄介なのが、"小さな達成感"である。以前、ある高校の監督がこんな話をしてくれた。
「春のセンバツに出て、甲子園で1つ、2つ勝ったら、なんだかそれで選手たちが満足しちゃったみたいな感じになってしまって......。練習試合で負けていても、以前のように『逆転するぞ!』みたいな覇気がないんです。心がしぼんでしまったようで、困っています」
そうした気の緩み、油断が番狂わせの大きな要因になっていることは間違いないが、その一方で、強豪校に対して怯(ひる)まずに向かってくる公立校も多い。選手個々の意識が高く、「自分たちの戦い方はこれだ!」と自信を持って挑んでくる。
敗れはしたが、昨年の大阪大会決勝で大阪桐蔭と互角に渡り合った大冠(おおかんむり)などは、まさにこれだ。
いくら強豪校とはいっても、戦っているのは高校生である。実は"番狂わせ"といっても、もともと両校との間に戦力差はそれほどないのかもしれない。
大波乱の地方大会を勝ち抜き、甲子園100回大会の出場を勝ち取るのはどこなのか。過酷なトーナメントはまだまだ続く。
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