「浜高の野球で勝て」。兄の想いを胸に、和田毅の弟が古豪復活に挑む (3ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

「『いつかは母校で監督をしたい』という思いはもちろんありました。でも異動が決まったときは『自分みたいな若いもんが......』と、気後れする気持ちも正直ありました」

 さらに、和田が浜田高に異動する直前に同校野球部内でのいじめが発覚。2016年春に赴任した当時は対外試合禁止処分が言い渡されており、部内が大きく揺れている時期だった。

「赴任した当時はやっぱり大変でしたね。選手たちの気持ちもグラグラしていて。大会はもちろん練習試合もできない。目標を見失いかけている状況でした」

 和田は乱雑な使用が常態化していた部室の整理整頓や道具の扱いなど、プレー以外の部分から地道に立て直しを進めていった。6月には「ずっと同じグラウンドで過ごしていても気が詰まるという思いもあったので......」と、夏の島根大会の会場でもある松江市営野球場を使っての練習を行ない、試合ができないなかでも、夏へ向けて部員たちのモチベーションを保っていった。

 そして夏の島根大会開幕の前日、7月12日に処分が解除。「ぶっつけ本番」に近い形で母校の指揮官としての初陣を迎えることとなった。

 さらに初戦の相手は、奇(く)しくも昨年度まで監督を務めていた松江商高。偶然としては出来すぎと思える巡り合わせだった。

「決まってすぐは正直『やりづらいな』と思いましたね。でも『運命なのかな』とも同時に思いました。6月、松江に遠征したときに、松江商時代の指導者陣と食事をして、『なんか当たりそうだな』と冗談交じりに話していたんですけど、本当にその通りになって。当然、松江商での教え子たちも『絶対に倒してやる』という気持ちで向かってきていましたし、こっちのベンチから相手側のベンチやスタンドが目に入るので......。色々な思いがありました」

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