大阪桐蔭とガチで打撃戦。府立校・大冠は地元中学の軟式出身者が主役

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 7月30日に大阪信用金庫シティスタジアム(旧・舞洲ベースボールスタジアム)で行なわれた、センバツ王者・大阪桐蔭と初の決勝進出を果たした公立校の大冠(おおかんむり)の大阪大会決勝戦。終盤まで1点を争う展開となったが、大阪桐蔭が底力を見せつけ、8回裏に5点を挙げて10対4と一気にリードを広げると、スタンドの観客から「ここまでか......」と大きなため息がもれた。しかし、大冠の選手たちには誰ひとりとして試合をあきらめる者はいなかった。

大阪大会決勝でセンバツ優勝の大阪桐蔭相手に堂々の戦いぶりを見せた大冠ナイン大阪大会決勝でセンバツ優勝の大阪桐蔭相手に堂々の戦いぶりを見せた大冠ナイン「ここから逆転するぞ。何があるかわからんのが、高校野球なんや」

 大冠の東山宏司監督の声に選手たちはもう一度、気持ちを奮い立たせた。すると、代打で起用された165センチ、53キロの背番号14・山口剛史が、大阪桐蔭のエース・徳山優磨からレフト左に弾き返す二塁打を放った。

 試合前、"徳山対策"として東山監督は「ストライクは全部振れ」と指示。打席での積極性こそ大冠の野球であり、その姿勢は最後まで貫かれた。

 この一打にスタンドのボルテージは一気に上がった。一死後、さらに3連打で2点を加え4点差。なおも一死二、三塁の場面で、実況していたラジオのアナウンサーはこう言った。

「ここでヒットが出て、ふたりの走者を置いて、もし一発が出れば同点です」

 プロ野球チームでもなければ、大阪桐蔭や履正社のようにプロ注目のスラッガーがいる強豪私学でもない。しかし、アナウンサーに「もし」を言わせてしまう打線。それがこの夏の大冠だった。

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