早実・清宮幸太郎のセンバツ出場を阻む、都内のライバル投手たち (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 以上のように都内の好投手を紹介してきたが、ここでひとつ大事なことに言及しておきたい。それは、そもそも今夏の時点で、清宮と真っ向勝負するようなバッテリーなど、ほとんどいなかったということだ。

 多くのバッテリーは清宮に対して「基本的に全打席歩かせてもいい。ボール球を引っ掛けてくれればもうけもの」という配球だった。自分たちの実力と清宮の実力を天秤にかけ、彼らは清宮とはまともに勝負しない選択をしたのだ。それは野球のルール上、まったく問題ないことであり、また賢明な判断だったと言えるだろう。

 投手は能力が高ければ高いほど完璧な投球に近づくことができるが、打者は能力が高ければ高いほど勝負を避けられる、皮肉な運命を辿ることになる。それでも、今夏の清宮がそうしてきたように、いかにボール球に手を出さず、甘く入ってきた失投をミスショットせずに仕留められるか。清宮にとってこの1年の大きなテーマになりそうだ。

 早実には清宮以外にも好打者がいる。今夏も3番・清宮に続いて4番を任された1年生スラッガーの野村大樹に、中距離打者の好素材・橘内俊治。投手力に不安はあるものの、秋の大会とは思えない破壊力のある打線で勢いに乗れば、早実のセンバツ切符は確実に近づいていくだろう。

 そして少々ハードルが高いことは承知しつつも、今大会で清宮に対してがっぷり四つの勝負を挑めるような実力者が現れることを期待したい。

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