「末代の恥」から6年。開星前監督・野々村直通が見た甲子園 (4ページ目)
「この前は『おばあちゃんの白寿(99歳)のお祝いに』という依頼があって、写真をもらって似顔絵を描きましたよ。元気になってほしいと思って描いたら、すごく喜んでもらえてうれしかったなぁ……。ワシがやっていることは『芸術家』なんて大それたものじゃない。似顔絵を描いて人に喜んでもらえたら、それで十分ですよ」
ギャラリーをオープンしたため、開星野球部の練習や試合を見に行くことはだいぶ減ったという。
「もう部外者だし、選手たちは元気よく挨拶してくれるけど、ワシは何もしていませんよ。山内(弘和監督/野々村氏の教え子でもある)がよく指導していますよ。昨年の秋もそうだったけど、接戦で勝てるチームをつくっています」
そして野々村氏は自虐的に「ワシにはできなかったことだわ」と言って、顔をほころばせた。
新生・開星の6年ぶりのセンバツは、初戦で東北の強豪・八戸学院光星(青森)と対戦した。序盤から3点を失う苦しい展開も、3回表に重量打線が2点を奪い返し、場内を大いに盛り上げた。だが、その後は小さなミスが重なり、打線も好投手・櫻井一樹の前に沈黙。結局2対6で敗戦した。
長年にわたって野々村氏をサポートした村本克部長は試合後、「ウチは失点をとどめて接戦に持ち込めないと勝てない」と悔しさを滲ませながら、それでも「ウチのチームはこれで終わりじゃない。上には上がいるということを知って、夏に挽回します」と前を向いた。
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