短すぎた札幌・小野伸二の浦和凱旋。
「天才」に懸ける手はなかったか

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

「(埼玉スタジアムでは)いつもこんなにたくさんの人が応援してくれる。レッズにいたときは当たり前だと思っていたけど、それが当たり前じゃないと気づいて、今は羨ましさもある。

 一方で、コンサドーレのサポーターもたくさん来てくれたので、(彼らに対して)似たような気持ちもある。今日は試合に負けてすごく悔しかったけど、素晴らしい環境でサッカーができたことは本当に嬉しかったです」

J1第8節の浦和戦で途中出場した、札幌の小野伸二J1第8節の浦和戦で途中出場した、札幌の小野伸二 北海道コンサドーレ札幌の小野伸二は浦和レッズとの試合後、そう言ってファンとピッチに感謝した。プロキャリアを歩み始めた古巣の本拠地には、清水エスパルス時代の2011年6月以来の帰還となった。

 日本サッカー界の比類なき「天才」が、かつてのホームでどんなプレーを見せてくれるのか。両チームのサポーターだけでなく、多くのサッカーファンがその勇姿を心待ちにしていた。しかしベンチスタートの背番号44に声がかかったのは、2点ビハインドの終盤の79分。ボールを触ってリズムを作る小野が、彼らしいプレーを披露するにはちょっと短すぎた。

「もう少し長くピッチに立てればよかったけど、チームの戦術もあるので」

 試合後の取材エリアで多くの記者に囲まれた小野は、まずはそう言って、正直な気持ちとベテランらしい理解の両方を示した。でも旧知の地元記者たちとの話が進むうちに、「もっと長くできたら、本当はもっとね、よかったと思うんですけど」と率直な胸のうちを垣間見せた。

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