オリックス・中川圭太は「我慢こそが成功につながる道」で無敵の存在に。才能を信じ続けた指揮官との絆 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

「走塁は、高校(PL学園)、大学(東洋大)からずっと意識してやってきました。走塁練習を基礎からやってきたからこそ、勝手に染みついているところなのかなと思います。僕はPLでハングリー精神を学びました。常に上を目指そう、もっとうまくなりたいという気持ちをずっと持ち続けていられるのはPLのおかげだと思っています。大学で指導していただいた高橋(昭雄/今年の9月に74歳で逝去)監督には、今も『ちょこちょこせず、積極的にガンガン打て』と言われているような気がします」

 そしてプロでめぐり逢った指揮官との熱き抱擁......中川の才能を信じ続けた中嶋聡監督は、サヨナラ打を放った愛弟子を両腕で強く、強く抱きしめた。

「監督さんには『よくやった』と言われました。毎日、深い話をするわけではないんですが、たまーに、試合前のバッティング練習の時、『もうちょっと積極的に行かんかいっ』とか、出されたサインに対してミスをしてしまった試合の次の日、『ゴメン、出したこっちが悪いから、それぐらいに思っておいてくれ』なんて言ってくれたりします。もちろんミスをして申し訳なく思っているのはこっちですし、技術不足を反省しなきゃとも思いますけど、でも、正直、監督さんにそんなふうに言ってもらえると気がラクになります。そういうところ、監督さんはすごいなと思っています」

 どの打順でもその役割を理解してそつなくこなす。内外野も守れるユーティリティ......そんなイメージすらある中川だが、中嶋監督だけは彼の類い稀なバッティングセンスを早々に見抜いていた。

 二軍監督だった中嶋が監督代行として一軍の指揮を初めて執った2020年8月、中川をいきなり4番に抜擢して「無敵の圭太を見てきていますので」と話したエピソードはよく知られている。

「"無敵の中川"ですか? グッズも出してもらってるんで、気に入ってるとしか言いようがないですね(笑)。でも、すごくいい言葉だと思います」

 そんな中川に訊いてみた。「本当に無敵なんですか」と......すると、意外に可愛らしい答えが返ってきた。

「いや、絶叫マシンが苦手なんです。子どもの頃から、ジェットコースターとか、絶対に無理です(笑)」

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