恩師が語る村上宗隆のターニングポイント。
「甲子園に出て変わった」

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 村上宗隆(ヤクルト)のプロ2年目は、最下位に沈むチームとは対照的に、大躍進のシーズンとなった。打率.231はセ・リーグ規定打席到達者では最下位で、喫した三振数184も断トツのリーグワーストである。しかし、36本塁打、98打点はともにリーグ3位で、新人王レースでもセ・リーグの新人最多安打記録を更新した近本光司(阪神)とハイレベルで争っている。そして何より評価できるのが、セ・リーグでは唯一の全試合出場を果たしたことだ。

高卒2年目ながら36本塁打、98打点の活躍を見せたヤクルト・村上宗隆高卒2年目ながら36本塁打、98打点の活躍を見せたヤクルト・村上宗隆 そんな村上の活躍に目を細めるのが"育ての親"、九州学院高校野球部の坂井宏安監督だ。村上は高校1年夏の甲子園に出場し、同学年のライバル・清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)と比較されるなど、常に注目を集めながら高校通算52本塁打を放った。その成長過程を見てきた坂井監督が、親心たっぷりに村上の2年目を総括した。

「昨年の暮れに帰ってきた時、彼を見て確信したんですよ。『しっかり練習しているな』と。手を抜くことなく、オフの練習に取り組んでいた。高校時代から練習する子だったけど、プロに入っても野球を最優先にしているな、と。田舎の子がお金を手にしてしまうと、つい誘惑に負けてしまったりするじゃないですか。ただ、村上は誘惑というものが何なのかもわかっていないんじゃないか(笑)。誘惑すら気づかないぐらい、野球に打ち込んだ1年だったんじゃないかな。

 昨シーズン終了後、村上は台湾のウインターリーグに参加しました。そこに行くとみんな体重が落ちて帰ってくるらしいのですが、『村上だけは体重が増えて帰ってきた』と球団の方も言っていました。その話を聞いて、しっかり目的を持って行ったんだなと安心しました。食事が合う、合わないではなく、環境が変わってもしっかり食べて、そして練習した。練習することが一番大事、試合に出させてもらうことが一番の喜びだと感じながらやったんじゃないでしょうか」

 入団する際、小川淳司監督(当時)から「1年間は下(二軍)でみっちりやらせます」と告げられたという。

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