「獲るつもりのなかった選手」杉谷拳士が栗山監督に言わせたいひと言

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘、スポルティーバ●写真 photo by Koike Yoshihiro,Sportiva

 レフト、センター、セカンド、ファースト、ライト。

 オープン戦が始まって、杉谷拳士が守ったポジションだ。代打あり、代走あり、守備固めあり、もちろんスタメンでも出場している。去年はサードも守っているし、ショートだってできないはずはない。プロ入り後、一軍では1試合しか経験はないが、春夏合わせて3度も甲子園に出場した帝京高校では、3年生の時にキャプテンを務め、背番号6をつけてショートを守っていたのだから----。

ユーティリティプレーヤとしてベンチからの信頼が厚い杉谷拳士ユーティリティプレーヤとしてベンチからの信頼が厚い杉谷拳士 ユーティリティ。

 足が速く、バントもできるし、バッティングも悪くない。どこでも守れて、元気もある。こういう選手がベンチにいてくれたら、監督としては楽だろう。しかし、栗山英樹監督はこう言っていた。

「ケンシ(杉谷拳士)にはいつも言ってるんだよ、『お前はこんなもんじゃないだろ』って。だからもちろん、レギュラーポジションを獲ってほしいと思ってるよ。監督になった時、ハルキ(西川遥輝)、タク(中島卓也)、コンちゃん(近藤健介)、ケンシの4人はこのチームの中心になるべき選手たちだと考えていたし、だからケンシにはユーティリティだからベンチにいて欲しいなんて、そんなふうには思ってない。アイツが3割打てるなら、いくらでもポジションはあるんだからさ」

 プロで10年、一軍で501試合に出場し、通算で206安打、ホームランは8本。今や押しも押されもせぬレギュラーとなった西川、中島、近藤に、杉谷は大きく水をあけられた。杉谷は言う。

「プロで10年、自分では『こんなもんじゃないよ』という感覚のほうが近いかもしれません。今、ウチにいるメンバーの誰よりも一軍へのデビューは早かったし、もっとやれるという気持ちはありました。でも、二軍のピッチャーを打てても一軍のピッチャーとなるとなかなか打てないという壁にぶつかって、もどかしい思いをずっと抱えてきました。今じゃ、僕だけが監督の期待を裏切っているので、もちろん、このままじゃ終わらないぞと思っています」

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