井川慶の野球人生を変えた「突然のチェンジアップ」

エースの響き~ブルペン捕手・中谷仁が見た「超一流の流儀」
オリックス・井川慶

 中谷仁です。私は1997年のドラフトで阪神から1位指名を受け入団し、その後、楽天、巨人でもプレイしました。2012年まで現役を続け、昨年は巨人のブルペン捕手として チームのリーグ優勝を見届けました。この16年の間、実に多くの投手の球を受けてきました。実際に受けた経験をもとに、超一流と呼ばれるエースたちの素顔に迫りたいと思います。今回は私と同期入団で、2003年に20勝をマークし、阪神のエースとしてチームを支えた井川慶(現・オリックス)についてお話させていただきます。

阪神時代の03年には20勝を挙げ、18年ぶりの優勝の立役者となった井川慶阪神時代の03年には20勝を挙げ、18年ぶりの優勝の立役者となった井川慶

 井川慶はこれまで私があまり会ったことのないタイプの人間で、彼の言動に何度も驚かされました。2006年オフにポスティングでヤンキースに総額30億円というとんでもない金額で移籍したのですが、井川はお金への執着がまるでありません。好きな野球をどこまでも楽しく追い求める男なのです。

 とにかく、入団当時からマイペースな男でした。昔は僕と同じぐらいの給料だったので、大体の金額はわかっています。僕の場合は、「プロになったんだからおごってくれや」と言ってくる同級生に食事をご馳走したり、自分の洋服を買ったり、自由に使っていました。今にして思えば、もっとちゃんと貯金しておけばよかったと......(苦笑)。一方で井川は、1カ月で1万円使ったら「今月は使いすぎた。来月は控えよう」と言っていたぐらいの倹約家。基本的にはコンビニも行かず、飲むものといえば寮にあるお茶や牛乳、オレンジジュース。そんな井川が毎月のように買っていたのが、ゲームソフトです。当時は2本買うと大体1万円ぐらいだったので、それで1カ月の買い物は終わり。

 1万円を超えたのは、当時インターネットがあまり普及していない時代にノートパソコン、プリンター、デスクを一式揃えて、部屋をオフィスのようにしていた時と、ヘリコプターのラジコンを買った時ぐらいですかね。

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