「こんなうまいショート見たことない」西短・近藤大樹はセンスの塊だ

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports

 球速なら「MAX〇〇キロ」といった具体的な数字があって、ある程度の印象は与えられることができるが、 投手の"緩急"のテクニックや内野手の"フィールディング"のうまさを文章で伝えるのは難しい。だが今回、西日本短大付(福岡)のショート・近藤大樹(だいき)の守備のすごさをいろんな表現を駆使して、なんとお伝えしたいと思う。

 身長171センチ、体重70キロ。サイズ的にはどこにでもいる普通の選手である。ところがいざショートのポジションにつくと、どんな難しい打球でもいとも簡単に捕球し、確実にアウトにする。おそらくプロに交じっても、まったく遜色がないだろう。

守備だけでなく、パンチ力があるバッティングも魅力の西日本短大付・近藤大樹守備だけでなく、パンチ力があるバッティングも魅力の西日本短大付・近藤大樹「高校生でこんなうまいショート見たことない」。これが近藤の第一印象だ。ドラフトまで、今年は"近藤推し"でいこうと思っている。それぐらいの逸材である。

 では、近藤の何がすごいのか――。

 彼はいつもどこかを見ている。足元を見て、風を見て、太陽の位置を見る。走者が出れば、ランナーを見て、相手ベンチを見て、打者の仕草を見る。そして最後に味方野手のポジショニングを見る。

 打球が飛んでくる前に、なるべく多くの情報をインプットする。近藤の場合、ただ情報を集めるだけじゃない。そこからいろんなことを想定し、しっかりと準備する。

 ある試合で、二塁ベース前あたりに飛んできたゴロがイレギュラーして、捕球しようとする近藤の前でポーンと跳ねた。「あっ!」と思った瞬間、見事に反応して、何事もなかったようにアウトにしてみせた。試合後、近藤は涼しい顔でこう語った。

「見えていたんです。あそこ、ちょっと掘れているなぁ......って。あのあたりに打球が飛んだら、ボールは跳ねるか、沈むかのどっちかですから。半身で構えて、跳ねたらうしろ、沈んだら前というふうに決めていました」

 また、打球が外野を抜けた時のカットプレー。打球を追い、外野手が長い距離を走るほど、息が上がり返球が逸れるものだ。近藤にしてみればそれも想定内で、いつもより距離を詰め、大声を出して自分の位置を伝える。

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