競技と人生。片山右京が語る
「世界で戦える者と戦えない者の違い」

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira
  • photo by AFLO

 自転車ロードレースの本場欧州に上陸し、究極的にはツール・ド・フランスへの参戦を目指す――と以前から公言するTeamUKYO代表の片山右京は、最高峰にたどり着く者と、そうではない者たちの差を、こんなふうに表現する。

「日本でやっているうちはいいんですよ。でもそこから、『世界に行くよ』と表明したときに、反応は2種類に分かれる。『ああ、そうですか』って(他人事のように)言う人と、『行きたいです。何があっても絶対にやります』って答える人。

 僕がF1に行こうと思っていたときも、たぶんそうだったと思うんだけど、それくらい燃える情熱がないと、世界では戦えないですよ。だって、向こうは身長が2メートルもあるような外国人選手だってゴロゴロいるわけだから、気持ちで負けているようでは、(レースでの)位置取りなんか絶対にできない。だからかわいそうだけど、大切に育てられて連れて行ってもらっても、それだけではそこから先を戦えない。世界っていうのは、そういう場所じゃないですか。

 ずば抜けた才能があるか、誰よりも強い情熱があるか――。そういう人たちしか、そこでは生き残れない。口で言うのは簡単だけど、限られた人しか行けない場所で、自分が直面する痛みを考えると、その勇気を持つのはどれだけ大変なことか。ましてや自転車は、大半の選手が自分を捨ててエースのために戦う競技だから、そのアシストに徹するためには、肉体的な強さはもちろん、精神的にも非常な強さが求められる競技だと思うんですよ。

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