【自転車】ツール・ド・フランス観戦を飽きさせないJ SPORTSのノウハウ

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira  photo by AFLO

 ステージレースは、ドラマで言えば連ドラみたいなものだから、3週間のうちに様々なエピソードがあって、物語の結末は最後のステージまでわからない。その頂点のツールを楽しむために、ジロを観戦して選手やチームについて理解してもらい、ツールが終わったあともそれで終わりとするのではなくて、ツールで活躍できなかった選手たちが今度はブエルタで花を咲かせることもある、という大きな流れを楽しんでもらえることを、番組制作では意識をしています」

 1日に100キロから200キロの長距離を走る自転車ロードレースは、中継時間もいきおい長いものになる。山場を迎えるのは、その日のゴール直前のラスト30分程度だが、その前に行なわれる微妙な駆け引きが後の勝負を大きく左右する伏線になることも珍しくない。だが、それらの駆け引きも含めて、自転車レースの大半の時間は淡々と推移する。その「地味な」時間帯を放送としていかに保たせるか――ということは、プロデューサーを含め、実況コメンテーターやゲスト解説者を悩ませる大きなポイントだ。

 だが、それは逆に、彼らの腕の見せどころといってもいいだろう。俗に「居酒屋中継」という言葉があるが、大きな動きに乏しい時間帯は、実況者とゲストの他愛もない雑談などの肩の力が抜けたやりとりが、テレビ観戦する視聴者にもリラックスした雰囲気を提供することがある。ただし、これもバランスが肝心で、あまりに無制限に話が脱線しすぎてしまうと、趣味性の強いスポーツ中継だけに、かえって反感を招くことにもなりかねない。そのあたりの微妙なさじ加減でモノをいうのが、コメンテーターたちの知識と経験と個性だ。

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