【自転車】片山右京「日本人が海外挑戦しづらい要因とは」 (3ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira
  • TOBI●写真 photo by TOBI

片山 それはやっぱり、ヨーロッパに向けた橋が架かっていないからでしょう。これだけ何でもある日本という国の中で、なぜ日本国籍のプロコンチネンタルチームがないのか……。

今中 だから、日本人選手はものすごく貪欲でなければならないんです。欧州では、アマチュアの世界ですでに熾烈な戦いがいくつもあって、そこを勝ち抜けば自然に強くなっていく環境です。

片山 もっとみんなで話し合って、世界に行くことを戦略的に考えなければいけない時期にきているのかもしれませんね、僕たちのチームも含めて。

今中 日本でそれをやるためには、よっぽど大きな体制や枠組みを作ってチャレンジしないと、スタートラインにもつけないですよ。モータースポーツの世界でもそうだと思うんですが、選手はもちろん本場のスタッフを入れて、政治的な折衝や駆け引きをしやすいコネクションを作り、ある程度話したら即決で参戦が決まる……というような環境を作らなければいけません。だから、右京さんには大きな構えのチーム体制作りを期待したいんです。

片山 そのためには、どこを目指すのかということをまずはハッキリさせないと。上ばかり見ていると、ピラミッドの下がおろそかになって、本末転倒になる場合もある。だから、目指すところによってシステムや方法は変えなきゃいけないけど、だからこそ僕たちにとってはチャンスで、予算をしっかり確保しながら、今中さんが言ったような海外経験の豊富なマネージャーやメカニック、スタッフを揃えることも、2016年以降に向けた陰の準備のひとつとして考えています。そういった環境が整って、ついでに成績まで揃えば、もしかしたら、「棚からぼたもち」もあるかもしれない。

 ただ、それを実現するためには、今までと同じようなやり方ではとても難しいだろうから、何か新しい手法を始めなきゃダメでしょうね。でも、それはこの間、夜、寝ているときに神さまが降りてきて、教えてくれたから。

今中 えーっ!

片山 ……というのは冗談だけどね(笑)。

今中 そんな、まるで夢のような(笑)。

片山 要するに、とにかく新しい方法をね。「まだまだ人類は捨てたものじゃないぞ」という、価値に対してお金ではなく提供できる、人間に唯一残された何か……なんですよ。

今中 何それ。えーっ?

片山 たとえば、クラウドファンディング(※)でも何にしても、人が応援する気持ちは、「そこに可能性があるから賭けてみよう」という想いなわけで、何もないところに「お金を出してください」と言って企画書を見せたって、信憑性がないでしょう? だから、ほんの欠片(かけら)ぐらいでも夢を見てもらったほうが、人は動いてくれるだろうな……と思っているんです。

※クラウドファンディング=不特定多数の人がインターネット等を経由して他の人々や組織に財源の提供や協力などを行なうこと。

(次回に続く)

プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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