【自転車】片山右京「トラック全日本覇者がTeamUKYOを選んだ理由」 (3ページ目)

  • 西村章●構成・文・写真 text & photo by Nishimura Akira

 転倒した窪木は、追突してきた自動車のタイヤに脚をひかれ、「ああ、これでレース人生が終わった……」と思ったという。

「すぐにマッサーの森川(健一郎)さんが飛んできて、向こうの運転手に怒鳴り込んでくれたんです。その気持ちはとても嬉しかったんだけど、『それはいいから、早く病院に連れて行って』と思ってて、その後、病院でレントゲンを撮ってもらったら、幸いにも骨は折れてなかった。その一方で、ゴールした人たちには、『窪木が死ぬかもしれない』というふうに話が伝わっていたらしくて、僕が夜遅くにタクシーでホテルに帰ると、『おお、大丈夫じゃんか。めっちゃ心配したぞ』って驚かれました。だから、あのレースは印象的でしたね(笑)」

 その後、夏のツール・ド北海道では総合4位。Jプロツアー第18戦の地元いわきクリテリウムでは優勝を飾った。総じてTeamUKYO移籍1年目は、窪木一茂にとって実りの多いシーズンだったといえるだろう。

「TeamUKYOは、監督がツール・ド・フランス参戦を目標に掲げていて、土井さんもヨーロッパから帰ってきた。チームの志(こころざし)はもともと高いし、若手選手もやる気がある。僕もやる気がある。そういう環境の中でお互いが高めあえて、すごく濃密な1年でした。でも、来年はもっと濃い1年になると思います。

 ツール・ド・フランスはものすごくハードルが高い目標で、毎年選手が入れ替わるかもしれない。そこで生き残っていくためにも、もっと自分が強くなりたい。だから、来年こそはロードレースでいい結果を残したいし、トラックレースでも2年後のリオ・オリンピックを目指したい。今はロードもトラックも面白いので、来年が楽しみで本当にワクワクしているんですよ」


(次回に続く)

【profile】
窪木一茂(くぼき・かずしげ)
1989年6月6日生まれ、福島県出身。日本大学出身。卒業後、和歌山県庁に就職し、同時にマトリックス・パワータグに所属。2014年、TeamUKYOに移籍した。2014年11月、全日本選手権オムニアムで優勝。

プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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