2014.11.17

【自転車】片山右京「僕が子ども向けスクールを主催する理由」

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

 照れたような笑みを浮かべる片山に、なんだか高僧の悟りみたいな話になってきましたね、と少しまぜっかえしてみた。すると片山は、照れを隠すように大きく破顔し、さらに勢い込んで語り続けた。

「でもさ、おれが偉いお坊さんと違うのは、別にいい人を目指しているわけでもなんでもないからね。むしろ自分がサバイバルするための、バイタリティとエネルギーの話だから。ちょっとの食糧をもらって人のために祈るとか、そういうことじゃなくて、いつか絶対にエベレストを冬期無酸素登頂してやるという気持ちはなくならないし、そのために好きなカップ麺を食って、バイクで走り回って、好きなことをやり続ける。

 命っていうのは残念ながらいつかなくなるし、人間は歳を取っていく。でも、F1で時速300キロでの走行中、眼球が振動してなかば朦朧(もうろう)とするような状態のときに生きていることを実感できたり、エベレストの頂上直下で風が止んだときに自分の体内の音が聞こえたり、そういう感覚を自分は知ってしまったから、『愉しいぞ~!』って。これからも一所懸命、好きなことを続けていく。そういう大人たちがたくさんいることが、子どもたちに何よりいいメッセージにもなる。そう思うんですよ。

 理性や自制心とのバランスを持ちながら、チャレンジや冒険を続けていく――。それを支えるのは物理的な体力だし、チームワークだし、さらにオーバーに言えば、そういうものを受け入れられる社会づくりを目指していきたいんですよね」

(次回に続く)

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