【自転車】片山右京「スペイン人ライダーが語る『ツール参戦』」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira photo by Sportiva

 その合宿で行動をともにしていたチームキャプテンの狩野智也は、シーズン開幕直後すでに、

「リカルドは、ホセ(・ビセンテ/TeamUKYO所属)と同じくらいの実力を持っている選手だと思いますよ」

 と、そのポテンシャルを高く評価していた。Jプロツアー開幕戦の宇都宮クリテリウムは、トップと2秒差の大集団でゴール。第2戦の伊吹山ヒルクライムは、ホセが2年連続で優勝を飾ったレースだが、このときリカルドは4位でフィニッシュした。

「やっぱ、リカルドは強(つえ)えわ......」

 新加入したばかりの、このスペイン人選手の能力について、狩野はレース後、そんなふうに振り返っている。

「180センチ超と上背があるので、エウスカルテル時代は、山よりも(平地での)スピードマン的な役割だったようです。とはいっても、彼はバスク人だから、登れるというベースがあって、さらにスピードがある、ということ(※)。本人は登れないと言っているけど、そのレベルが日本とは違いますよ(笑)。ホセだって、自分はクライマーじゃないといいながら、あの(早い)タイムで伊吹山を登ってしまうわけですから」

※スペインという国は伝統的に山岳コースに強い「クライマー」と呼ばれる脚質のロードレーサーを多く輩出している。

 狩野たちの期待に違(たが)わず、Jプロツアーのシーズンが進むにつれ、リカルドは日本のレースで好成績を収めていった。6月に入るころには個人獲得ポイントで首位に立ち、数戦に渡ってルビーレッドジャージを着用し続けた。その後、チームの欧州遠征に先だってひと足先にスペインへ帰国したリカルドは、Jプロツアーで欠場が続き、自動的にルビーレッドジャージを手放すことになった。その後、他チームの選手に奪われていたポイントリーダーの座は、夏が終わってシーズンが再開すると、昨年の王者ホセが奪還したのは、前回前々回にも紹介したとおりだ。

 そのホセとリカルドは、同じスペイン人とはいえ、性格面ではかなり対照的なところがある。ホセは日本の求道者を感じさせるような一面を持つが、リカルドの場合は陽気でおおらか。いつも笑顔を絶やさず、誰に対してもオープンな人柄で、ある意味では日本人が想像しやすい「典型的なラテン気質」と言ってもいいかもしれない。

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