【自転車】片山右京「刺激を与えてくれる外国人選手の存在」

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 また、彼は平地も走れるし、激坂でも土井(雪広)君より登れていました。ただ、レースの終盤に土井君が『先に行け!』と指示しても、彼は待っているんです。良い悪いは別にして、ある意味で非常に日本人的な性格なんですね。でも、騎士道精神を尊重する自転車ロードレースという競技は、非常に日本人的な側面があって、仲間のためにすすんで自分を犠牲にする武士道の精神にも非常に相通ずるところがある。苦しいとき、極限状況にいるときにこそ、人間の本心や本性は露(あら)わになるじゃないですか。夏の欧州遠征では、サルバドールの献身的な姿をはじめ、そういういろんなことが明らかになる良い機会でした。彼のような人材を通じて若い選手を育てることもできるから、サルバドール・グアルディオラは今のTeamUKYOにこそ必要な人材です」

 Jプロツアー後半戦の緒戦となった第13戦・みやだクリテリウムでも、グアルディオラは期待通りのパフォーマンスを発揮し、チームの上位フィニッシュに貢献した。2013年個人総合優勝のホセ・ビセンテや、昨年までプロコンチネンタルチームのエウスカルテル・エウスカディ(スペイン)に所属していたリカルド・ガルシア、そしてこの夏に加入したグアルディオラたちは、日本の選手たちに対して良い刺激になるはずだと片山は話す。

「極端なことをいえば、日本のJプロツアーにレースの本場ヨーロッパから選手を大量に投入して、どんどん活躍してもらい、彼らに勝つためにはいったいどうすればいいのか……と、日本人選手が指標にするチームがあってもいいのかもしれません。その一方で、若い日本の選手たちをアジアツアーヨーロッパツアーのレースに積極的に送り出して、本場の空気をどんどん吸収してもらう。

 今後の人材発掘や育成のために、日本のサイクルロードレース関係者のみなさんは各方面で多大な努力を続けていますが、TeamUKYOも自分たちに可能なことから実行し、少しでも本場欧州の水準に近づけるよう、自分たち自身と日本の競技レベル向上に貢献したいと思います」

 9月のレースは、7日に栃木県渡良瀬でJプロツアー第14戦・タイムトライアルチャンピオンシップ、翌週の13日~14日はUCI[2.2]カテゴリーのツール・ド・北海道、そして20日~21日にはJプロツアーで最も多くのポイントが与えられる第15戦・経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップが広島で開催される。これらのレースの結果が、TeamUKYOの2014年シーズンの行方を大きく影響させることになるだろう。

(次回に続く)

プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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