【自転車】片山右京「最初の一歩は何だって小さいもの」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 五十嵐和博●撮影 photo by Igarashi Kazuhiro

 しかし、それだけ実力のある指導者や関係者を自陣営へ取り込んでいくためには、自らのチーム体制をその水準に引き上げ、確固とした運営体制を築き上げていく必要がある。これはある意味で、『鶏と卵』のジレンマにも似た問題だ。

「でも、必要なことを箇条書きにしたって、100個や200個もあるわけじゃないだろうから、シンプルにプライオリティ(優先順位)をつけて10個、15個と順番にやっていけばいい。たとえば、合理的で科学的な考え方が日本のスポーツ界の中でだいぶ浸透してきたとはいっても、『体育的』な体質はいまだに根強い部分が残っている。そことプロフェッショナルスポーツの間には、まだ大きな壁があって、野球やサッカーなどの成功している競技からシステムを学ぶべきことはいっぱいあるな、とも感じます。でも、日本が恵まれているのは、グローバルな企業がたくさんあるところ。企業の経済活動とプロスポーツのプロモーションが相反することなく、ヨーロッパ市場にうまくアピールしながらプロスポーツの側もうまく回るということは、決してできなくない話だとも確信しました」

 そのために、現在は新しいTeamUKYOの活動体系を計画している段階なのだ、とも片山は言う。

「市場のシェアを争って、負けたほうが倒産するという厳しい戦いをいくつも経験してきた企業のトップたちが、もしもこのスポーツ(自転車ロードレース競技)――あるいはこのTeamUKYOを成功させる手法について戦略を立てるとすれば、もっと短時間で効率的にお金を使って、いいパフォーマンスで結果を出すと思うんですよ。でも、それを人に頼っていてはいつまでも実現できないから、自分たちが体力をつけていくために、目標までの道筋をしっかりと視野に入れて、新たな活動をスタートしたい。今はまだアイディア段階なので、事業計画として具体的に話をできるまでには、もう少し時間が必要ですけどね」

 今はまだ頭のなかで描いている段階という、このTeamUKYOの新たな活動体系は、年内にも具体化させて、来年に向けて動き始めたい、と片山は考えている。

「レース活動はもちろん、ボランティアやチャリティ、子どもたちを対象にしたチャレンジスクールのような活動――、また、パリダカ(パリ・ダカールラリー)や登山などの冒険レベルに至るまで、自分たちがこれまでやってきた様々な活動が、点から線になってつながり、『TeamUKYOとは?』という存在意義を捉えなおしたうえで、自分たちが世の中に対してできること、自分たちの感謝をどういう形で社会に還元していくか、ということを明確にしていきたい。企業がCSR(企業の社会的責任)を果たすのと同じように、TeamUKYOはそういう当たり前のことを形にしていきたいと考えています。

 ジョン・レノンの歌詞じゃないけど、理想論ばかり言っている夢想家だと思われるかもしれない。けれども、僕の長年の経験では、ある程度のところまで来たから大丈夫だと思う。経済界のお歴々も、話をすればちゃんと聞いてくれる。いわゆる、日本の国力を高めることと、このスポーツに対して必要なことは同じものだから、サポートしてくれる人もいそうだという手応えはつかんでいます」

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