【自転車】片山右京「欧州初レース。太刀打ちできなかった」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 五十嵐和博●撮影 photo by Igarashi Kazuhiro

 しかも、そのプロトンをコントロールしている連中は、疲れた表情ひとつ見せない。まるで、指示されたタイミングで計算された出力や回転数を出して、プログラムどおりに動くロボットの集団のよう。統制が取れていて、そのスピードがまた尋常じゃない。あれを見ていると、『怖いな......』とすら思いました。僕たちがテレビで観ているようなレース展開を普通にこなせるチームが、ヨーロッパではコンチネンタルのレベルでもゴロゴロしているわけです」

 いわば今回の欧州レース参戦は、TeamUKYOの掲げる理想と現実の差を容赦なく突きつけられる経験であった、というわけだ。

 しかし、そこで片山たちが目の当たりにしたのは、厳しい現実だけではない。TeamUKYOで戦う個々の選手のパフォーマンスやモチベーション、そして、自分たちがチームとして欧州のレースに参戦していく意義など、有形無形の多くの成果を得ることができた、と片山右京は考えている。

「第2ステージでは、住吉(宏太/TeamUKYO)が生まれて初めて逃げ集団に入って、最後はプロトンに吸収されてしまったけれども、『つい、カラダが反応しちゃいました』と素晴らしいファイトを見せてくれた。でも、次の日に住吉は体力を使い果たして制限時間オーバーの足切りにあってしまったので、その翌日以降はレースに参加できなくなりました。ただ、補給所までクルマで一緒に連れて行くと、『ここから先はトレーニングで走って行きます』と住吉は自転車で走って行きました。そんな住吉の後ろ姿を見たり、スプリンターの平井(栄一/TeamUKYO)がレースに耐えて最後まで完走した表情を見ていると、それぞれ考えたり、感じたり、葛藤したりしながら多くのことを学んだのだろうな、あぁ良かったな、と思います。

 彼ら若手以外にも、ホセ(・ビセンテ・トリビオ)が逃げて捕まって、今度は土井(雪広)君がカウンターでアタックして、その次に新加入のサルバドール(・グアルディオラ)が逃げを試みて......。毎日のステージで誰かが何かしらの行動をしてくれて、苦しいレースの中でもTeamUKYOの存在感はしっかりと示すことができました」

 また、今回の欧州遠征では、人と人との輪が作る関係の重要さも身に沁みて感じたという。

「チームができてまだ3年目の日本のコンチネンタルチームが、どうしてヨーロッパで歴史も格式もあるボルタ・ア・ポルトガルのようなレースに出られたのかというと、やっぱり人とのつながりだと思うんです。ホセがスペインからTeamUKYOに来てくれて、その後もリカルド(・ガルシア)やサルバドールが来てくれて、スペインで少しずつ輪が広がっていった。スペイン側からすれば、経済状態が悪くて失業率はふたケタで、ロードレースチームがバタバタと潰れているときに、日本のチームが選手を雇ってくれている。向こうも人情として、『そんなチームが欧州にレースをしにやって来るのなら、声をかけてあげようよ』という輪が広がっていって、参戦につながった」

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