2014.07.07

【自転車】片山右京「第101回ツール・ド・フランス開幕」

  • 西村章●構成・文・写真 text & photo by Nishimura Akira

 その今中を、もう一度、ツール・ド・フランスの舞台に連れて行きたい――。最終ステージのゴール、シャンゼリゼに立たせてやりたいという思いを、片山右京は胸に抱いている。

 この話題に触れると、今中はややうつむき加減になった。そして、込み上げるものをしばし抑え込むようにしたあと、面を上げて照れたように訥々(とつとつ)と口を開いた。

「右京さんがそう思ってくれているのは、ありがたいですね……。まるで映画のような、夢のような話です。僕自身、みなさんのためにと思って今まで様々な活動をしてきましたけれど、逆に自分のために何か、ということは言われたことがないので……。そう言ってもらうたびに、自分も何かしなきゃ、右京さんが頑張りやすい状況を作らなきゃ、と思います」

 そこまで献身的な思いを抱くのは、競技ジャンルは違えども、偶然にも同時代に世界の頂点を目指してレースの本場欧州で活動をしてきたという、強い相互理解があるからだ。さらに、片山が現在のサイクルロードレース界に果たした貢献の大きさにも報いたい、と今中は言う。

「僕らの時代はドロップハンドルの自転車で走っていると、『競輪選手?』とか、『トライアスロンやってるの?』と言われる状態で、公道を走ってトレーニングをしていてもクルマに幅寄せをされたりして、肩身の狭い思いをしてきたんです。近年のロードバイク人気の高まりには様々な要因があるだろうけど、右京さんはそれに間違いなく加速をつけてくれた。特に、競技に特化していたこともあって、日本の自転車ロードレースにとっては救世主のような存在です。だから、右京さんがツールを夢見ているのであれば、なんとかしてその力になりたいですね」

 そのためにも、来年が勝負の年になる、と今中は言う。

「スピードが命です。楽観的でばかりもいられないのですが、各方面の人材を増やして層を厚くし、選手やスタッフ、右京さんの思いがうまく回っていくようにしっかりと順序立てて取り組み、運営していくことが必要でしょうね。モータースポーツのTeamUKYOがうまくチームを運営できているように、それと同じレベルのものを自転車チームでもきっと達成してくれると思います」

 101回目のツール・ド・フランスは、イギリスからドーバー海峡を越えて、フランスへと舞台を移す。選手たちの大集団は、最終ゴール地点のシャンゼリゼに向かって走り続けている。今はまだ、遥か遠くの極東の地にいるTeamUKYOも、数年後のシャンゼリゼを目指し、ひたすらペダルを踏み続けている。

(次回に続く)

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