【新車のツボ168】スズキ・ハスラー。ニッチなはずが今やド定番のすごいヤツ (3ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text & photo by Sano Hiromune

 Keiは2009年に1世代かぎりで終了してしまうのだが、その「普通のクルマに毛が生えた程度」のちょうどいい存在感と走破性能が、じつは積雪地域のアシグルマとして根強く支持されていた。Keiの生産が終了すると、積雪地域の販売現場から「Keiのお客さんが、次に買うクルマがなくて困っている」という声が、スズキに寄せられるようになったという。

 そうはいっても、スズキという企業にとってKeiは微妙な商品。よって、その声を直接聞いた役員が開発現場に下した指示も「そういう声があるから、やってみれば?」という程度の軽いノリ(?)だったとか。スズキにはもともとジムニーという本格SUVがあるし、会社の期待もさして大きくなかったから、現場は「これ幸い」と、好き者が集まって自由に開発したのだという。

 だからこそ、ハスラーはほどよく肩の力がぬけた楽しげな雰囲気をもっている。悪路走破性もジムニーほどではないが、ちょっとした雪道には十二分。そんなほどよい性能と存在感、そしてプロの技術者が自由につくったツボがマニアにも受けて、初代ハスラーは見事にヒット商品となった。その着想もあくまでスズキの身内事情によるものだったから、他社がノーマークだった(から、競合車もなかなか登場しなかった)のも当然である。

 というわけで、現在売られているハスラーは2世代目なのだが、お気楽(?)につくられた初代とは一転して、今度はスズキの屋台骨商品としての大きな期待と責任のもとで開発されたことはいうまでもない。

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