【新車のツボ164】コペンGRスポーツトヨタがイジッたダイハツ製スポーツカー (3ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text & photo by Sano Hiromune

 クルマの性能づくりは、とにもかくにもタイヤから......とは、モータースポーツ界でも市販スポーツカーの開発現場でも基本的に同じで、タイヤ変更は本来GRスポーツのお約束である。しかし、コペンにかぎっては、世界的にも希少な軽スポーツカーということで、そもそも非常に特殊なサイズのタイヤを履いている。事実上ほかの選択肢はなく、またタイヤを専用新開発させるのは莫大なコストがかかるので、今回だけは普通のコペンと同じタイヤである。しかし、実際にできあがったコペンGRスポーツは、とても同じタイヤとは思えないほど、ねっとり吸いつくグリップ感がなんとも豊潤な味わいなのだ。

 コペンにはすでに「S」というハード嗜好のグレードがあるのだが、GRスポーツはさらに上級に位置づけられるコンプリートモデルながら、実際の乗り心地は既存のSより明らかに快適で、身のこなしも柔らかい。だからこそ、荒れた路面でもクルマが暴れにくいのだが、同時に高速域でのステアリング反応やライントレース性の正確性がまるで落ちていない......どころか、さらに進化したようにすら感じられるのは、なんとも絶妙な床下のボディ補強と空力の調整がツボと思われる。

 コペンGRスポーツにおける空力の工夫は前後バンパーによって左右方向を安定させる空力と、床下スパッツによるリアタイヤの揚力低減という。「市販車レベルで空力なんて関係あるの!?」と思われる向きも多いだろうが、ずばり空力はそのレベルでも効く。もちろん、単独で乗るだけでは分かりにくいが、ビフォーアフターで乗り比べられれば、それこそ車速30~40km/hから、ほぼどんなドライバーでも体感できるのが本物の空力というものだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る