【新車のツボ155】VW up!GTI。スポーツカーの機微を公道で味わえる (3ページ目)

  • 佐野弘宗●文・撮影
  • text&photo by Sano Hiromune

 up!は基本的に安いクルマなので、このGTIでもボディやサスペンションの構造はあくまでシンプルでローテクである。またサイズも小さいので、GTI化で高まったスピードや横Gに耐えるために、乗り心地はけっこう素直に硬い。最近はスーパーカーでも乗り心地は快適なものが多いので、up! GTIに乗るとコツコツ感が正直いうと気になる。それに、暴走と言われるスピードまでいかなくても、だらけた運転だとカーブで走行ラインが容易にふくらんでしまうこともなくはない。

 つまり、なんだかんだいっても、up! GTIは性能限界がさほど高くないので、きれいにスムーズに走らせるのには、運転の基本をきちんと守らなければならない。

 ただ、そうした小さな弱点こそが、up! GTI最大のツボでもある。最新の高性能車はどんな運転をしたところで速いし、運転の良し悪しがクルマの走りに影響するようなら、それはもはや制限速度のはるか上のハナシ......なのが現実である。しかし、up! GTIなら、そういうスポーツカー的な機微(きび)を、公道の良識的なスピードで味わえるのだ。

 もっとも、そこまでいかなくても、up! GTIは運転が楽しいクルマだ。とくに感心するのはアクセル操作と実際のエンジン反応に、ターボ特有のズレ(専門用語で過給ラグ、ターボラグなどと呼ぶ)がほとんどないことで、一瞬の加減速だけでもテンションが上がるのだ。ターボ技術がこれほど進化した現代でも、これほど一体感のあるターボは少数派だ。さすが『インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー』を受賞しただけのことはある。

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