【新車のツボ153】ホンダNSX。これぞ、現代の公道を走るF1だ (4ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text & photo by Sano Hiromune

 NSXを昔ながらの古いスーパーカー観で評価すると、なるほど「静かすぎ」、「おとなしすぎ」、「見た目とギャップありすぎ」、そして「快適すぎ」となるだろう。しかし、同時にNSXはメチャクチャ速く、しかも独自の左右トルク配分ハイブリッドのおかげで、その速さがまるでコツ要らずに引き出せるところがスゴい。それに、これだけ高度な運動性能を、こんなに柔らかい乗り心地と両立できるのは、NSXが超低重心だからでもある。そう考えると、NSXの快適さは「こんなスーパーカーな見た目なのに」ではなく「典型的なスーパーカーデザインだからこそ」なのだ。

 V6、ターボ、ハイブリッド、ミドシップ......というNSXのツボの多くは、今のF1のツボと同じである。まあ、エンジン排気量やハイブリッドの構造などは本物の最新F1とまるで異なるが、それはしかたない。世界でもっとも特殊なクルマであるF1を、そこまで厳密・忠実に市販車に落とし込むと、意外と遅くてつまらないクルマか、あるいは普通の人間にはとても操れない神経質なシロモノ......になってしまうと思われる。そんなスーパーカーは商品としてまったく成り立たない。

 それでも、現代のF1のツボをもっとも忠実に公道で表現できている市販スーパーカーは、メルセデスAMGでもフェラーリでも、そしてマクラーレンでもなく、間違いなくこのホンダNSXだと思う。

【スペック】
ホンダNSX
全長×全幅×全高:4490×1940×1215mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1780kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ・3492cc+3モーター
最高出力:507ps/6500-7500rpm
最大トルク:550Nm/2000-6000rpm
変速機:9DCT
JC08モード燃費:12.4km/L
乗車定員:2名
車両本体価格:2370万円

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る