【新車のツボ153】ホンダNSX。これぞ、現代の公道を走るF1だ (3ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text & photo by Sano Hiromune

 このように価格、見た目、メカニズムのすべてのツボが超ハイテクで超スーパーなNSXだが、実際の乗り味はビックリするほど快適で静かで優しく、そしてイージーなのだ。

 サスペンションやパワーユニットにはいくつかの電子制御の走行モードが用意されており、それを"スポーツ+"や"トラック"といった硬派モードにすれば、乗り心地はそれなりにハードに、そしてエンジン音量も大きくなる......のだが、それでも思わずズッコケそうなほどに快適で優しく、静かである。まして走行モードを"クワイエット"や"スポーツ"といった穏健側のモードにすると、NSXの乗り心地はもはや「レジェンドよりおとなしいのでは!?」と錯覚するほど静かで柔らかくなる。

 最近のスーパーカーはどれも乗り心地は良くなっているが、いっぽうで厳しくなる排ガス規制や騒音規制のなかで「いかにレーシングな迫力を味わわせるか?」の誇大演出競争になっているのも事実。NSXはそんな風潮のなかで「もうそんな時代じゃないっしょ!」と、ひとり別の宇宙に向かっているかのようでもある。良くも悪くも独特の世界観だ。

......と、そんなNSXに乗ったら、ワタシは昨年秋の鈴鹿F1グランプリを思い出した。それは個人的に10数年ぶりの生F1だったのだけれど、そこでなにより驚いたのは"音"がめちゃくちゃ静かなことだった。しかも、ただ音量が小さいだけでなく、その音色にもかつてのような絞り出すカン高さがまるでない。「普通の乗用車エンジンかよ?」と錯覚するほどの平穏さに、完全に拍子抜けしてしまった。

 ただ、考えてみると、NSXのツボはまさに現代のF1のそれにそっくりである。

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