【新車のツボ149】ルノー・メガーヌR.S.。いよいよ秘密兵器を投入 (3ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text&photo by Sano Hiromune

 シビック・タイプRがやけに凝ったリアサスペンションや鳥居のごとき巨大リアウイングをもつことからも分かるように、じつはFFでも「いかにリアグリップを確保するか」が最新の技術トレンドなのだ。その意味でいうと、目立った空力付加物もなく、リアサスペンションも簡素な半リジッド方式を採る新型メガーヌR.S.に、ファンは「これで大丈夫かよ?」とヤキモキするだろうが、ご安心を。

 新型メガーヌR.S.が丸腰で登場してくるはずもなく、きちんとライバルにはない秘密兵器を用意した。それは4コントロールと名づけられた"四輪操舵"システムである。四輪操舵は最近ではポルシェやBMW、レクサスも好んで使っているが、メガーヌのような価格帯のFF車では類例のないハイテクだ。

 メガーヌR.S.の四輪操舵は、低中速コーナーでは後輪を逆位相(=前輪と逆ハンドル)にしてグリングリンと俊敏に曲がりまくり、高速になると今度は同位相(=前輪と後輪が同じ方向に切れる)となって、見えないレールに......というか「これって4WD!?」と錯覚するほど四輪がベッタリと張りついて走る。

 同位相ではリアタイヤのグリップが向上するが、逆位相ではリアタイヤのグリップが落ちる......のが四輪操舵の基本原理で、この種の高速車では、とくに逆位相の使いかたがむずかしい。しかし、メガーヌR.S.ではそのサジ加減が絶妙すぎるほど絶妙で「低中速コーナーではチョウのごとく舞い、高速コーナーでは巨大ウイングがなくとも根が生えた安定」という背反するツボを見事に両立する。

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