【新車のツボ116】トヨタ・プリウス試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文 text by
  • photo by TOYOTA

 今年9月に世界発表されて、最近では"プロトタイプという名の初期生産車"をメディア露出させるなど、周到な事前キャンペーンを繰り広げてきたトヨタの新型プリウスが、ついに正式発売となった。

 というわけで、価格は従来より額面でおおよそ20万円ほど高くなったが、お世辞ぬきで高級感が大幅アップしたインテリアや、オートブレーキなどのハイテク安全装備の充実を考えると、割高感はない......というか、実質値下げといってもいい。

   最大の注目点である燃費でも、ギリギリで大台(40km/L)か......という大方の予想を、さらに超えた40.8km/Lのカタログ燃費をうたう(これは素直にスゴい!)。もっとも、そのEグレードの内容はリアワイパーまで省略して軽量化した"燃費レコード更新専用グレード"というほかなく、普通の人にはオススメしにくい。この価格にふさわしい内容の主力グレード(FF車)では、燃費は37.2km/Lまで落ちるが、それでも従来の市販車最良燃費車だったトヨタ・アクア(第26回参照)やスズキ・アルトをきっちりとぬいている。

 発売当初は注文が殺到しているようだが、最終的な国内販売台数は先代ほど伸びない可能性は高い。いまは、以前存在しなかったアクアという弟分がいるからだ。そのいっぽうで、アクアがあったからこそ、新型プリウスもここまで高級になれた......ともいえる。

 プリウスにとって燃費は最大のツボではあるが、そこに驚きはあまりなく、新型プリウスの本当のツボは別にある。「燃費日本一」という最低限のノルマ(?)を達成したうえで、前記の高級感も含めて、トータルで"いいクルマ"だということである。

 これは豊田章男トヨタ社長がかかげる「もっといいクルマづくり」という社是に沿ったもの。この種のお題目は表層的にすぎないケースもなくはないが、さすがは創業者一族出身にして、世界でもトップクラスのクルマ好き社長だけに、この社是はピュアでマジなのである。そして、それに従う開発チームも意地とプライドにかけて、いいクルマをつくろうとしているのは彼らに直接インタビューするとヒシヒシと伝わってくる。本当だ。

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