【新車のツボ113 《特別編》】東京モーターショー2015直撃レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

【BMW M4 GTS】
   普段使いにもちょうどいいサイズで、昔風にいうと"ヒツジの皮をかぶったオオカミ"的な成り立ちで、マニア間でカリスマ人気を誇るのがBMWのM4(とその4ドア版のM3)である。

 このM4 GTSはただでさえバカッ速のM4を、これでもかとカリカリにチューンした限定車。軽量化のためにリアシートやエアコンまで取り払われた"ナンバーも付けられるツーリングレーシングカー"である。

 かつては世界を代表するモーターショーだった東京も、今やゼネラルモーターズやフォードなどの米国メーカーも、フェラーリに代表されるスーパーカーメーカーも来なくなってガラパゴス化が進んでいる。その他の海外メーカーにしても、東京に世界初公開モデルを持ちこむ例は数えるほどしかない。

 そのなかで、このM4 GTSは今年の東京モーターショーで数少ない"世界初公開の新型車"である。新車販売は縮小傾向の日本だが、こういう超マニアックなスポーツカーだけは、今も世界でも五指に入る消費大国なのだ。このクルマの世界デビューの場にわざわざ東京を選んでくれたBMWの心意気には、素直に感謝のツボである。


【マツダRX-VISION】
   専門メディアにおける記事の多さや、マニアの盛り上がりを見るかぎり、今年の東京モーターショーのトップスターは、この"マツダ RX-VISION"といって間違いない。

 これは新世代ロータリーエンジン(以下、ロータリー)搭載を想定したスポーツカーのコンセプトカーだ。ロータリーは事実上、世界でマツダだけが実用量産化に成功した技術で、ロータリーを積んだスポーツカーの"RX-7"は今もマニアの語り草。あのル・マン24時間レースで日本車として唯一総合優勝経験があるのも、マツダのロータリー車である。

 ロータリーのメリットはエンジン本体が超コンパクトで、かつハイパワーであることだ。逆にデメリットは燃費が悪いことで、環境時代の今はそれが最大のネックとなって、2012年以降、ロータリー車は生産されていない。

 このコンセプトカーは最近絶好調のマツダによる「ロータリーをまたやるぜ!」という決意表明でもあるが、具体的な技術内容は明らかではなく、発売予定も「いつの日か」だそうである。マツダが本気でロータリーを復活させたがっているのは間違いない。しかし、今のクルマ業界を取り巻く状況は混沌としており、本当に復活できるかどうかは、かなりビミョーな気もする。

 それでも、大々的に宣言してしまうアツい心がマツダの魅力であり、さらにこのコンセプトカーが、細かい理屈ぬきに純粋にカッコいいのが人気のツボだろう。なるほど、このベタッと低いボンネットはロータリーを想定しないと実現不可能だ。全体のプロポーションは「ボディは長く、幅広く、低く、前後オーバーハングは短く、キャビンは小さく」という"カッコいいスポーツカー"を作るための古来からツボに超忠実。ここまで教科書どおりにデザインすれば、カッコ悪くするほうが逆にむずかしい!?

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プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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