【新車のツボ111】
スズキ・ソリオ試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

  

 ソリオは全長と全幅はコンパクトカー最小クラスだが、背丈だけがドーンと高い。室内空間は先代でもビックリするほど広かったのに、エンジンルームをよりコンパクトにして、ボディのスミズミまで垂直に四角くした新型ソリオは、さらに広くなった。それに加えて、左右フロントシートの間をとおって、車内を前後に歩いて移動できるのが、軽にはできないソリオ最大の一発芸。壁際ギリギリに駐車しても、リアのスライドドアから乗り降りできるのは、一度体験すると超絶に便利である。

 それだけではない。インテリアにはボックスティッシュからスマホやハンカチ、ごみ箱......と、いちいちニヤリとしたくなるピタリ収納がそこかしこにあって、「カップホルダーが四角い!?」と思ったら、それは最近のニッポン女子がよく飲む500ml紙パックのためという。トランクはリアシートを調整しなくても、12ロールのトイレットペーパーを縦に積んだり、最近よく見かけるようになった買い物用マイバスケットもピタリと載せられる。

 走りもいかにも日本的な柔らかさ。スイフトのようにビュンビュン飛ばして真価を発揮するタイプとは正反対。山道も不安ではないが、速いわけでも、ことさら楽しくもない。ただ、高速を100km/h前後でごく普通に走るときの静かさはちょっとしたものだし、スリムなボディは、路上駐車の多い混雑した道路や、昔ながらのせまい路地で、目からウロコが落ちるようにスイスイと走れる。

 現代ニッポンの生活様式のツボをこれでもかと突きまくる設計は、さすがスズキ。軽の開発で、日本特有のクルマの使われ方、そしてとくに女性ドライバーの声に耳を傾けてきただけのことはある。同じスズキでもグローバル商品のスイフトを、ここまで日本化することはむずかしいだろう。

 日本ではスイフトと双璧的存在のソリオだが、スイフトのようにオタクの趣味心をソソる要素は皆無に近い! しかし、いっぽうで、これほどニッポン人のツボに最適化されたクルマもほかにない。

  

【スペック】
スズキ・ソリオ・バンディッド・ハイブリッドMV
全長×全幅×全高:3710×1625×1745mm
ホイールベース:2480mm
車両重量:950kg
エンジン:直列4気筒DOHC・1242cc+モーター
最高出力:91ps/6000rpm
最大トルク:118Nm/4400rpm
変速機:CVT
JC08モード燃費:27.8km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:182万5200円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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