【新車のツボ109】
ホンダ・ジェイド試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

  走りはお世辞ぬきにスゴイ! ジェイドには1.5リッターエンジンにモーターを追加した低燃費の"ハイブリッド"と、モーターじゃなくてターボを掛け合わせた"RS"の2種類があるが、どちらも地面にベタッと張りついて、ミニバンっぽい腰高感はホントに皆無。まあ、実寸法も立体駐車場フルサイズ(1550mm)よりさらに低くて、普通のセダンとほぼ同じ背丈なのだから、腰高感がないのは当たり前ではある。

 ただ、実際のジェイドのステアリングの鋭さと正確さ、ボディがピタリの安定感、それでいて生き物のように滑らかによく動くサスペンション......などは、いかにも"走りに振り切れたときのホンダ"特有のオーラがただよう。同じジェイドでも、今回のRSはよりスポーツテイストを重視した仕立てで、コーナリングスピードは驚くほど速い。1.5リッターターボは実質的に従来の2.2〜2.4リッター級の性能だが、それでもまったく物足りないくらいに、ジェイドの基本フィジカルは高度だ。

 聞くところでは、ジェイドの企画当初に「走りに特別こだわるオーナーが多いホンダ車は?」という調査がおこなわれたという。1位はまあ予想どおりの"タイプR"だったが、2位がなんと3〜4代目オデッセイだった。実際のオデッセイという名前は、前記のとおり上級背高ミニバンに与えられたが、それはあくまで商品名=商売の都合であり、4代目オデッセイのクルマとしての心意気は、ジェイドが受け継いだということである。

 現在はタイプRを名乗るホンダは国内販売されておらず、日本で新車が手に入るホンダでは、このジェイドと軽スポーツカーS660(第103回参照)が"今のホンダのアツい走りツートップ"だと、ワタシは断言する!

 もっとも、背が異例に低く、その結果として室内はせまく、それなのに異様によく走るジェイドは、口悪くというと、ミニバンとしてはイビツである。実際にジェイドの販売成績は早くも国内トップ30圏外。今年2月に発売されたばかりの最新ミニバンと考えると、ハッキリいって、すでに不人気車(!)というほかないだろう(ジェイドはすでに中国でバカ売れしており、ホンダはトータルで損をしない計算をきちんと立てているが......)。

 ただ、イビツだがブッ飛んだ一芸入魂グルマで、かつ走りがギンギン......とは、いかにも根っからのホンダファンが好むツボだ。いまホンダらしいホンダに乗りたいなら、S660かジェイドに乗るべきである。


【スペック】
 ホンダ・ジェイドRS
全長×全幅×全高:4650×1775×1535mm
ホイールベース:2760mm
車両重量:1510kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1496cc
最高出力:150ps/5500rpm
最大トルク:203Nm/1600-5000rpm
変速機:CVT
JC08モード燃費:18.0km/L
乗車定員:6名
車両本体価格:253万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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