【新車のツボ100】ロールス・ロイス・レイス試乗レポート (3ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 自分でステアリングを握るべき2ドアクーペのレイスといっても、そこいらの下世話なスポーツカー(?)のようなふるまいは皆無。本気で走れば、スーパーカーなみの性能をもっていても、普段の運転感覚は粛々としたもので、路面に凹凸など存在しないかのように滑る乗り心地。ステアリングホイールそのものも大きく、そしてそのステアリングやアクセルや反応も“じんわりの極致”みたいな調律なので、しらずしらずのうちに、いい意味で上から目線の、落ち着いた上品な運転になるのがロールスのツボである。

 オートマは8速もあり、サスペンションも精巧な電子制御可変システムのカタマリなんだが、よくある“なんちゃらモード”とか“マニュアル・パドルシフト”みたいな切り替え式のオモチャはなにもない(エンジン回転計もない!)。しかも、こんなに巨大なのに、ボディの四隅が手に取るようで、ビックリするほど運転しやすいのがロールスだ。そりゃそうだ。お抱えの運転手だろうが、自分の運転だろうが、どこでも優雅にスイスイ走れてこそ、本物のVIPのツボってことなのだろう。

  やんごとない世界では、優秀な執事ほど黒子に徹して、その存在を意識させないものだ。ご主人の手をひとつも煩わせず、舞台裏などこれっぽっちも見せず、ご主人のツボを尽きまくるのがロールスという機械なんである。

 基本的に階級社会ではない日本では、本来の意味でロールスに乗るべき人間というのは存在しない。日本の皇室も昔はロールスを好んで使っていたようだが、今はもちろん国産車が基本である(パレード用のオープンカーなどはロールスだけど)。

 だから、日本でロールスに乗っているのは、みずからの才覚で成功した方々である。ロールスに乗る(あるいは乗っていた)有名人としてはビートたけしさんが有名だが、それ以外をネットで検索してみたら、鈴木その子氏(故人)やアパグループの元谷芙美子氏、たかの友梨氏……などがヒットした。

 圧倒的に女性が多いのは、男性の成功者の場合、まずはフェラーリなどのスーパーカーに乗りがちだからか。乗ってみればロールス自体が女性的なクルマとは思わないが、この世でここまでオーナーにかしづいてくれるクルマはロールス以外にない。このあたりが女傑たちのツボをくすぐるのかも。

【スペック】
ロールス・ロイス・レイス
全長×全幅×全高:5280×1945×1505mm
ホイールベース:3110mm
車両重量:2430kg
エンジン:V型12気筒DOHCターボ・6592cc
最高出力:632ps/5600rpm
最大トルク:800Nm/1500-5500rpm
変速機:8AT
JC08モード燃費:――km/L
乗車定員:4名
車両本体価格:3333万円

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