【新車のツボ96】トヨタ・ランドクルーザー70試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 きれいな舗装路での乗り心地は、路面と隔絶された浮遊感がちょっとあって意外と快適だったりもするが、少しでも凸凹があると、重いタイヤやサスペンションがユッサユッサと横揺れする。排気量は4.0リッターもあるので遅いクルマではないが、信号発進や高速道で流れをリードしようと思ったら、エンジンはとにかくガービーと騒がしい。

 さらに、空力技術が未熟だった昭和時代の設計だけあって、高速で100km/h付近になると、明らかにボディが浮き上がって不安になる。昭和の国産車には、車速が100km/h以上になると「キンコン、キンコン」と鳴る速度警告チャイムが装備されていた。アラフォー以上の世代ならご記憶だろう。もちろん、今のナナマルにそんなものは備わらないが、今回は欲しくなってしまった。内装デザインもまんま昭和なので、ここに懐かしのチャイム音が加わったら、オッサン世代は青春の思い出のツボが刺激されること必至である(笑)。

 そんなナナマルだから、とっくにフルモデルチェンジしてもよさそうなものだが、このクルマは「どんな僻地(へきち)でも修理できる、いざとなれば中古部品が使える」のが絶対条件。小手先のモデルチェンジは世界のだれも喜ばない......なんて伝説っぽいウンチクもまた、マニアのツボなのだ。

 ただ、ナナマルは運転しにくいクルマではない。その正反対。この運転のしやすさは感動的ですらある。運転席は、身長178cmの私でもサイドのステップにきちんと足をかけるか、グラブバーをつかんで身体を引き上げないと難儀なくらいに高い=目線が高い。しかも、生命を本気で預かる本物のツールらしく、車両感覚がバツグンで、ボディの四隅はまさに手に取るがごとし。エンジンは低回転でも粘りまくるし、クルマの動きはユッタリかつドッコイショという感じだが、反応そのものは正確。ねらったところをピタリと走る。

 再販となったナナマルの売れ筋は想像どおりバンだが、意外なことに、走りはピックアップのほうが好印象。ピックアップはリアに開閉ゲートがないのでボディ剛性感が高く、ホイールベースが長いので乗り心地や高速安定性もバンより良好。こういう隠れたウンチクや意外性も、とくにナナマルに反応する筋金入りの好き者にはツボだろう。

 さて、ナナマルの限定販売期間は「2015年6月末日生産分まで」である。ここで注意すべきは「受注」ではなく「生産」であることで、オーダーが生産可能台数に達した時点で受注終了となる。ナナマルは予想どおりマニア筋に大人気なので、受注が早期終了することは確実。ほしいなら、急ぐべし!

【スペック】
トヨタ・ランドクルーザー70ピックアップ(バン)
全長×全幅×全高:5270×1770×1950(4810×1870×1920)mm
ホイールベース:3180(2730)mm
車両重量:2220(2120)kg
エンジン:V型6気筒DOHC・3955cc
最高出力:231ps/5200rpm
最大トルク:360Nm/3800rpm
変速機:5MT
JC08モード燃費:6.6km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:350(360)万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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