【新車のツボ85】
フォード・フィエスタ試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 フィエスタは4本のタイヤが本当に生き物のようにヒタリと吸いついて、ステアリングやシートから伝わるグリップ感は、道路に素っ裸で座って、アスファルトを素手でなでているかのようにリアル。小さいナリして速度が上がるほど乗り心地はピタリと落ち着いて、ステアリングやアクセル、ブレーキ......といった微妙な操作すべてに、嬉々として反応するから、街中でもなんでも、まさに"操っている"という実感は絶えることがない。

 日本仕様は16インチなどというちょっと過剰気味のスポーツタイヤを履いているんだが、それでも矢のように直進して、ワンダリング(=ワダチなどで進路が乱されること)もほとんど感じられない。フィエスタの基本フィジカルが優秀な証拠である。

 そしてエンジンも強力無比。フィエスタのエンジンも昨今の欧州で流行っているダウンサイジングターボのひとつで、従来の1.6リッタークラスの性能をもつ。ただ、他社の同等エンジンが1.2~1.4リッターの4気筒なのに対して、フィエスタは1.0リッターの3気筒。それなのに、アクセルひと踏みでのけぞってしまうほどパワフル。しかも、3気筒とは思えない滑らかな高級感すらただよう。いやホント、このエンジンはマニア悶絶の歴史的な名機といってもよい。

 冒頭のダイハツF氏は、フィエスタの走りの美点を「ワインディング(=曲がりくねった山坂道)を走るときのクルマの姿勢と、インフォメーションの伝え方」と説明した。なるほど、そこがフィエスタのツボである。ことわっておくが、新型コペンの開発中にはフィエスタはまだ日本で販売されていなかったし、軽自動車とフィエスタは販売上のライバルでもなんでもない。なのに、コペンの開発で、ダイハツはフィエスタを目標にした。

 F氏へのインタビューでフィエスタの名前が出たとき、その意外性とダイハツの見識、私のツボはもうビンビンに刺激された。そして、軽自動車の開発で、よりによってフィエスタに目をつけるあたり、やっぱりプロはわかってらっしゃる......と、私はひとり感涙を浮かべちゃったりしたのだった。

【スペック】
フォード・フィエスタ 1.0エコブースト
全長×全幅×全高:3995×1720×1475mm
ホイールベース:2490mm
車両重量:1160kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ・997cc
最高出力:100ps/6000rpm
最大トルク:170Nm/1400-4000rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:17.7km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:235万5428円

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