【新車のツボ71】
マツダCX-5試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 実際、最新のCX-5はデビュー当時と見た目はほとんどなにも変わっていないのに、シートはより身体にフィットして、乗り心地が快適になって、操縦性はさらにジワリと自然なものなっている。その差はじつに微妙なものだが、確実に違う。

 アクセルペダルだけで微妙な加減速がしやすかったり、タイヤが路面にジワッと吸いつく感覚が手やお尻から伝わってきたり......といった"味"の部分は、デビュー時からかなりのデキだったが、最新版はさらに熟成きわまって、クルマと人間の一体感やフィット感が上がっている。今のマツダは運転したときの"味"、しかもわずかな機微による一体感にこだわりまくっている。マツダの技術者たちは今も"味"の追求を続けて、改良の手を休めず、その成果は発売済みのクルマにも惜しみなく注入される。

 マツダは、スポーツカーの開発でもないのにポルシェ(や、ときには旧車まで)など、世の中で"味がいい"と評判のクルマを購入して、その走りを科学的に分析したり、理想のシフトノブ形状を求めてエンジニアが個人的に医学系の勉強をしたり......なんて、いい意味で"クルマバカ"な取り組みをやっているという。彼らに話を聞くと、そんな日々の探求をじつに嬉しそうに話してくれる。つくり手がクルマが好きでたまらず、嬉々として仕事をしていることが、マツダほどストレートに伝わってくる国産メーカーはほかにない。

 冒頭に書いたように、CX-5の売れ筋は圧倒的にディーゼルである。ディーゼルは価格は高めだが、燃費がよく、ガソリンよりパワフルでスポーティ。ただし、ハンドリングの"味"という意味なら、エンジン本体が圧倒的に軽い(=車体のハナ先が軽い)ガソリン車のほうが軽快だ。ガソリンのCX-5はまるで小型スポーツハッチバックみたいにクルクル曲がる。エンジンの味が濃いのはディーゼル車だが、ハンドリングオタクのツボをより刺激するのはガソリン車のほうなのだ。なにより味に妥協したくなくなる今のマツダは、グレード選びひとつでも、難しくも愉(たの)しい。

【スペック】
マツダCX-5 25S・Lパッケージ(2WD)
全長×全幅×全高:4540×1840×1705mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1480kg
エンジン:直列4気筒DOHC・2488cc
最高出力:188ps/5700rpm
最大トルク:250Nm/3250rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:15.2km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:260.4万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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