2014.01.10

【新車のツボ70】
トヨタSAI試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 走りもそう。従来のSAIは軽量化のために静粛性もほどほどにとどめていたが、今度は一転して徹底して静かになった。パリッと軽快だったサスペンションも、重厚でソフト。これは昭和のオジサン風にいうと"クッションがいい乗り心地"というやつだ。

 最初のSAIにこめられた思いはそれなりに壮大で斬新だった。それを考えると、新しいSAIに「結局これかよ!!」とツッコミたい気持ちがないわけではない。新しいSAIは整備されたニッポンの舗装路をゆったり走るときには、なるほど素晴らしい乗り心地だが、かわりに、ちょっと道が荒れたり、カーブを勢いよく曲がろうとすると、いまいちピシッとしない。

 普段は"正確でピシッと走る欧州車テイスト命!"と書いているワタシも、もとは昭和生まれのオッサンであり、クラウンやマークII、シーマなどの"ニッポンの高級車"に日本国民全員が憧れた時代に青春を過ごしたひとりである。

 だから、SAIのソファのようなシートにダラッと座ってボケーッと走っていると、ワタシは「そうそう、こういうのが高級車だったのよ」としみじみしたり、インパネのダイヤルを触るたびに「そういえば、うちの茶の間に鎮座していたステレオコンポのボリュームもこうだったな」と思い出がよみがえったり......。あるいは今回の2トーンシートの"あずき色×象牙色"みたいな絶妙なセンスを見るに、なんだかんだいって、ワタシの甘酸っぱいツボがいちいち刺激されるのもまた、否定しようのない真実である。

 それにしても、マイナーチェンジで根本的な味わいまで変身するとは、やっぱりクルマは奥が深い。そして、マニア的な視点では"つまらない"とか"無難すぎる"とか"割り切りすぎ"と言われがちなトヨタも、こういうニッポン古来のツボを突くセンスはさすがというほかない。

【スペック】
トヨタSAI S
全長×全幅×全高:4695×1770×1485mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1570kg
エンジン:直列4気筒DOHC・2362cc+モーター
最高出力:150ps/5800rpm
最大トルク:187Nm/4400rpm
変速機:無段階動力分割装置
JC08モード燃費:22.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:321.0万円

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