【新車のツボ66】ルーテシア・ルノースポール 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 しかし、前記のモード切り替えを最も過激な"レース"すると、コイツはやっぱりルーテシアRSである。ルーテシアRSは歴代すべてが、専門家やマニアの間で「その時代で最高・最速の小型スポーツ」の評価をわがものにしてきており、その味つけはもはや伝統の老舗(しにせ)の雰囲気すら漂わせている。

 レースモードにすると、エンジン反応もパドル操作によるシフトチェンジも最速&最激になり、横滑り防止装置も完全オフになる。そして、それ相応の舞台(たとえば箱根みたいなアップダウンや大小コーナーが連続する山道)にいって、しかるべき走りをすると、んもうワタシを含むRS=ルノースポール信者は辛抱たまらない。エクスタシーである。

 ルノーには基本的に前輪駆動(FF)しかないので、RSもすべてFFである。

 とにかく後輪を地面に根が生えたように安定させて、そのうえで前輪を機敏かつ強力に反応させる......というのが、一般的なFFの教科書には書かれている。しかし、RSに伝わる教典の内容はちょっとちがう。四輪もろとも曲がるのがRS流儀。コーナー途中の微妙なアクセルやブレーキ操作で、後輪の軌跡を手足のように操れるのがいい。

 FFでここまで自由にクルクル曲げられるクルマは世界でRSだけである。あまりに自由なので、チョーシに乗りすぎるとハーフスピンさせるのも朝飯前(!)だが、それは「限界が低い」とか「神経質で危ない」という意味ではない。ルーテシアRSの絶対限界はすこぶる高いし、ハーフスピンさせるには乗り手も断固としてそのための運転をしないとそうはならない。ただ、そうしようと思ってやったときの"やりやすさ"が素晴らしく、その微妙な角度までピタリとコントロールできる。自己責任でクルマ遊びをするのに、こんなに楽しいFFはほかにない。

 現在のフランスのルノーは資本や技術の細かいところまで、日本の日産とガッチリと強固な協調関係で結ばれている。このルーテシアRSのエンジンも、じつは前回紹介した日産ジュークニスモと基本的に共通(しかも日産の横浜工場製)。また、この種のモノとしては世界一使いやすい大型の変速パドルも、あの日産GT-Rから移植されたものなのだ。われわれ日本のクルマ好きにとっては、そういうルーテシアRSにまつわる小さなウンチクもまた、たまらないツボである。

【スペック】
ルーテシア・ルノースポール(シャシーカップ)
全長×全幅×全高:4105×1750×1435mm
ホイールベース:2600mm
車両重量:1280kg
エンジン:直列4筒DOHCターボ・1618cc
最高出力:200ps/6000rpm
最大トルク:240Nm/1750rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:――km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:309.0万円

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