【新車のツボ48】ボルボV60 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ボルボはどのカーブでも1度たりとも前走車を見失わず、あの首都高でも割り込まれにくい絶妙の車間距離をキープして、追い越しでは車線変更の直前からなんとも絶妙に加速して、周囲のクルマに追い立てられることもなかった。もちろん渋滞区間も少なくなかったが、なんともまあ見事なブレーキングで前走車にピタリとついて最後は停まり、数秒後に流れ出せばまた自動で走り出して追従開始......の繰り返しだった。しかもボルボではこのACCの最高速度が200km/hまで設定できる。もちろん、それは日本では過剰な速度だが、こういうところもクルマ好きのツボをそそる。

 事故防止機能は本当の緊急事態にしか作動しないので、おいそれとは試せない。しかし、緊急事態以前......つまり車間距離が詰まりすぎたときや、斜め後ろにクルマがいて車線変更できないときにも、いちいち光や音で知らせてくるので「気をつけろ! 今のお前の運転は危なかったぞ!」など叱咤激励されているようで、これまた、クルマとの不思議だが心地よい一体感が生まれる。

 旧式クルマオタクであるワタシは、これまでは「自動運転なんてクルマの否定だ! 自分で事故を防げないならクルマに乗るな!」と信じて疑わなかった。しかし、クルマの自動運転もここまで極まると、まるで生き物のような息吹が生まれて、なんとも愛おしい気持ちになることを、今回はじめて知った。いやホント、自動運転の先に、こんなクルマのツボがあるとは思わなかった。

 今回のV60は最上級グレードだったが、創業から安全性に全身全霊をかけているボルボは、最新の60シリーズの全機種でこの安全機能が手に入る。たとえば、セダンのS60なら、この"世界最先端の自動運転"が400万円台から手に入る。クルマの世界は、いつの間にか、ここまでスゴイことになっているのだ。

 ......おっと、今回は自動運転の話ばかりになってしまったが、ボルボV60は自動運転なしでもステキなクルマだ。V60はワゴンでありながらスポーツカーみたいに流麗なカタチなのに、その運転感覚はいい意味で上品。オラオラ系のドライバーでも自動運転に素直に身をあずけたくなるのには、そういう癒し系のツボをつく乗り味も無関係ではない。


【スペック】
ボルボV60 T6-AWD
全長×全幅×全高:4630×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車両重量:1800kg
エンジン:直列6 気筒DOHCターボ・2953cc
最高出力:304ps/5600rpm
最大トルク:440Nm/2100-4200rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:8.5km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:549万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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