【新車のツボ46】日産NV350キャラバン 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 さらに機能性は現時点で、ほぼすべてキャラバンが勝っている。キモの最大荷室長はハイエースの5cm増しの3050mm。3種のエンジンはすべてハイエースよりパワフルで、売れ筋のもATはハイエースより1段多い5段式なので、燃費もハイエースより優秀。内装はハイエースより確実にモダンで、後席はハイエースにない2分割可倒式である。

 このクラス......つまり、キャラバンとハイエースは現在の商用バンで唯一のキャブオーバーレイアウトを採る。運転席は普通のクルマでいうボンネット突端の位置にあり、エンジンは前席のお尻の下。これは決められたボディ全長のなかにギリギリの荷室長を確保するためだ。そういうレイアウトなので、凸凹の多い路面では運手席ごと揺すられて乗り心地はハッキリと良くないし、エンジンノイズも乗用車と比較にならない音量で耳に届く。キャラバンはだから、乗用車を選ぶ視点ではまったくオススメできない代物だ。

 しかし、よじのぼるように座るシートはミニバンより1~2段も高くて見晴らしバツグン。目の前がすぐに路面なので、独特の運転感覚に慣れれば、素晴らしく取り回ししやすい。整備された道路なら、少なくともハイエースよりは乗り心地よく、そしてハンドリングも意外なほど俊敏で正確だ。

 ワタシもキャラバンなどまったく不必要な生活をしている人間だが、こうして驚異的に広大な荷室を見せられると、「ここに荷物を満載できる趣味が持てたら幸せだなあ」と、ツボをくすぐられてソワソワしてくる。各部はもちろん豪華でも快適でもないのだが、プロフェッショナルツール特有のゴツイつくりは、機械好き、道具好きにはたまらない。

 もう、ミニバンだのSUVだの中途半端なクルマ(?)なんてすべて忘れて、いっそキャラバンに乗っちゃおうか......。このクルマに1度でも触れたら、そう達観してしまうツボを持つ人は少なくないと思う。


【スペック】
日産NV350キャラバン・バン・プレミアムGX(ガソリン)
全長×全幅×全高:4695×1695×1990mm
ホイールベース:2555mm
車両重量:1810kg
エンジン:直列4気筒DOHC・1998cc
最高出力:130ps/5600rpm
最大トルク:178Nm/4400rpm
変速機:5AT
JC08モード燃費:9.7km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:262万800円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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