【新車のツボ44】
トヨタ・オーリスRS 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 "RS"というアルファベット2文字は、古今東西のクルマオタクのツボをくすぐってきた。

 RSの名が世界的に広まったのはおそらく1960年代のポルシェからだが、それはドイツ語の"Renn Sport(レン・シュポルト=英語でいうとレーシング・スポーツ)"の頭文字を取った車名だった。ポルシェはそもそも世界屈指のスポーツカーなのに、そのポルシェでもとくにレースで勝つためにつくられた特殊車両だけにRSの称号が与えられた。だから、一部のマニアにとって、RSは耳にするだけで昇天......というくらい特別な言葉なのだ。

 まあ、ポルシェ以降は世界の自動車メーカーがRSを商品名に使ってきたが、少なくとも欧州メーカーは、RSを軽々しく扱わない。ポルシェほどではなくとも、それなりに特別仕立ての本格スポーツモデルに限定して使う例がほとんどである。いっぽうの日本メーカーは70年代くらいからRSを使いはじめたが、欧州とは対照的に「海外でみつけたカッコいいネーミング」ってな軽いノリが目立つ。

 トヨタがこの秋に発売した新型オーリスにも、RSというグレードが用意されている。トヨタのRSもほかの日本車の例にもれず、スポーツモデルではあるが、あくまでほどほど......が通例。オーリスRSのエンジンは1.8リッターで、オーリスシリーズ(売れ筋は1.5リッター)としては高性能だが、かといって特殊なグレードというほどでもない。

 オーリスRSは、"RS"というネーミングにオタクが頭に血をのぼらせて乗っちゃうとまったく肩すかし......という感じだが、デキはいい。まず、スポーツモデルなのにどのオーリスより乗り心地がいい。カーブでのボディの傾き(いわゆるロール)は今どきのクルマとしては大きいものの、それだけ路面の凹凸をじわりと素直に吸収しているわけで、土台となるボディ各部もしっかりしており、乗り心地が丸くて豊か、そこはかとなく芳醇ですらある。

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