【新車のツボ36】スバル・レガシィ 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 もうひとつのズレは、スタイルだろう。ずばり"カッコ悪い"と評するスバリストは多いようだ。とくに先代が背の低いスモールキャビンのスポーツカー的なスタイルだったのに対して、現行レガシィは大きくなったうえに背も高い。さらに日本仕様にも少し配慮して、レガシィは同じクラスのライバルに比較すると、全幅だけがちょっとせまい。また、室内空間や視界性能にこだわって、窓が大きく、しかも角度が立っている。「カッコいいか悪いか」は個人の主観によるところが大きいが、現行レガシィが少なくとも"スポーツカー的なカッコよさ"と対極にあるのは事実だ。

 そんなレガシィにひさびさに乗ってみた。シリーズ最高性能の2.0Lターボだ。先日のマイナーチェンジで、エンジンが2.5Lターボから完全新設計の2.0L(トヨタ86/スバルBRZ用のターボ版)の2.0Lターボに切り替わった。にもかかわらず2.5L時代よりハイパワーの300馬力達成。しかもそのパワーを緻密に引き出せるCVTとの組み合わせ。それに"安っぽい"と不評だったインテリアも、パネルなどを変えて高級感はハッキリと増した。

 走りはステキのひとことだ。ステアリングやサスペンションもスバルらしく、地味だが確実に高級感と安心感と正確性が増している。それにしても、300馬力に18インチホイール......と、完全なスーパースポーツカー級のスペックなのに、乗り心地はしなやかで滑らか、神経質さや過敏さは微塵もない。

 しかも、この速さをフルに引き出すようなコーナリングで、ロールしきったと思われたさらにその先に、路面の凸凹をスルリと寛容に吸収するのには恐れいる。基本フィジカル能力がいかにも高い感じ。私ごときが「これならどうだっ!?」とあえて粗っぽい運転をしてみたところで、レガシィはまったく涼しい顔で受け止めてシレッと走ってしまう。いかに見る目が厳しく運転もうまいスバリストでも、この走りに文句をつけられる人はほとんどいないだろう。

 ただ、基本的なスタイルはもちろん変わっていない。これを「カッコ悪い」とするスバリストの気持ちもわからんではない。

 しかし、あえていおう。だれが見ても素直に「カッコいい」といえたスバルって、歴史上でも数えるほどしかない(と思うぞ)。デザイナーよりエンジニア主導で「表面のカッコより視界と車両感覚! コストやシロート受けより、走りとメカニズム!!」というのが、今も変わらぬスバルのツボである。


【スペック】
スバル・レガシィ・ツーリングワゴン2.0GT DIT
全長×全幅×全高:4790×1780×1535mm
ホイールベース:2750mm
車両重量:1600kg
エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ、1998cc
最高出力:300ps/5600rpm
最大トルク:400Nm/2000-4800rpm
変速機:CVT
JC08モード燃費:12.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:359.1万円

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