【新車のツボ32】三菱デリカD:3/日産NV200バネット 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 なによりまず、ドラポジが普通の乗用車と同じように違和感なく自然。伝統的なワンボックスやトラックのように、足元にステアリングシャフトが飛び出して邪魔だったり、シート調整幅が不足したり......もまったくない。また、高速道路や山道をブッ飛ばすときにも、自分が車体の先っちょに縛られて振り回されるような不安感もない。

 乗用モデル専用チューンのサスペンションも絶妙なサジ加減で、お仕事バンならではの堅牢感と、しなやかな乗り心地が両立した好事家のツボを突く味わいだ。空荷の商用車のドシンバタンとは別物で、ある意味フランス車っぽい癒し系......といったらホメすぎか!?

 室内空間もさすが商用バンの出自が輝いており、全高以外はコンパクトカーに毛が生えた程度の小ささなのに、身体がクルマのどこにも当たらずに大人7人がフツーに座れるほど広い。シートすべてをたためば、ほぼどんなジャンルの趣味道具も軽~くのみこむ。

 まあ、厳密にいえばシートは平板気味だし、着座姿勢もむりやり背筋が伸ばされる感がなきにしもあらずで、リアサイドウインドウが手動スライドの小窓なのも独特だが、そうした"これは兵員輸送車!?"の雰囲気がツボのマニア(ワタシを含む)も多いと思う。ステアリングを握るごとに"本日のミッションは......"などと妄想して、思わず笑みがこぼれそうになるのはワタシだけか?

 「どうしても3列シートが必要だから」とか「これを積むためにやむをえず」と、テキトーなミニバン(ミョーに子供ウケねらいの商品も多い)でお茶をにごそうとしている人にこそ、デリカD:3/NV200バネットに乗ってほしい。ダイバーズウォッチにカメラ、スポーツ用品......にかぎらず「プロフェショナル仕様の道具をあえて趣味で使う」ってのが、なんにつけても好事家やマニアの基本的なツボだから。それに、少なくともプロ仕様のゴルフクラブよりは、デリカD:3/NV200バネットのほうがわれわれアマチュアにもずっと使いやすいし、家族ウケもいい(はず)。

【スペック】
三菱デリカD:3 G
全長×全幅×全高:4400×1695×1850mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1350kg
エンジン:直列4気筒DOHC、1597cc
最高出力:109ps/6000rpm
最大トルク:152Nm/4800rpm
変速機:4AT
JC08モード燃費:12.8km/L
乗車定員:7名
車両本体価格:197.4万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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