【新車のツボ26】トヨタ・アクア 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 こうしたアクアのレイアウトは、じつは基本運動性能やハンドリングをよくする"低重心"にもつながり、低重心化のため(だけ)の新技術も大量に注入されているのだが、おおっぴらには喧伝していない。

 アクア開発チームを率いたチーフエンジニアの小木曽氏は、初代プリウスからハイブリッド一筋のトヨタ屈指のエキスパートだが、もともとはシャシー設計出身。そんな小木曽氏がアクアをつくるにあたって「ハイブリッドは燃費だけじゃない! 走りだってイケるんだぜ!」という悲願のツボをひっそりと仕込んだ。その象徴が"低重心"である。

 言っちゃ悪いが、少なくとも日本では、アクアの走りやハンドリングにこだわる人はほとんどいない。営業的にも、アクアの走りを必要以上に磨く必要はないだろう。

 アクアで街中を乗っているかぎりは、走りはごくフツーだ。ボディ剛性やサスチューンの熟成が足りないのか、日本のベストセラーを自認するなら、平坦路での乗り心地などはもう一歩引き上げてほしいとも思う。

 しかし、アップダウンが激しく曲がりくねった山道にいくと、アクアは路面にべったり張りついて、びっくりするくらい安定して、ステアリング反応も正確だ。ここにきて、こだわりの"低重心"の効能がハッキリわかる。

 つまり、アクアは基本フィジカル性能がとても高い。地道に改良していけば、硬派な走りオタクのツボを突く存在になる可能性は十分にあるし、基本的な素性はいいので、今後どんどん出てくるはずのチューニングパーツで自分なりに仕上げるのも面白いかも。

 アクアにはこのように、つくり手のマニアなツボがひっそりと注入されている。こういうクルマにワタシは弱い。

【スペック】
トヨタ・アクアS
全長×全幅×全高:3995×1695×1445mm
ホイールベース:2550mm
車両重量:1080kg
エンジン:直列4気筒DOHC・1496cc
最高出力:74ps/4800rpm
最大トルク:111Nm/3600-4400rpm
変速機:無段階動力分割装置
10・15モード燃費:37.0km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:179万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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