【新車のツボ25】シトロエンC5 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 とくに足まわりが柔らかめになる"オート"モードでは、フワーフワーッとゆっくり上下動しながら路面の凹凸を呑みこむ。それは厳密な意味での"フラットな乗り心地"とはいえないが、"魔法のジュータン"というべき快適性は、今も世界でシトロエンにしかない。また、写真にあるようにC5のステアリングホイールはセンター部分が固定で周囲の輪だけが回転する独特のもの。これもシトロエン特有の一風変わった設計だが、これまた絶妙のステアリングフィールを醸し出す。


 発売当初は3.0リッターV6などもあったエンジンも、今では流行の1.6リッターの"小排気量ターボ"のみ。C5のボディサイズは日本車でいうとトヨタ・クラウンなみだから、いかにも小さいエンジンだが、最新のターボつきで地力は2.2~2.4リッター級。

 さらに驚くのは、ごく普通に走った実燃費がカタログ燃費(10.2km/L)を下回らないことだ。これはシトロエンが「大切なのはカタログ燃費より実用燃費」と、カタログを飾るためだけの特殊な工夫をしていないからだが、これもじつに"深いい話"である(笑)。馬力課税時代が長かったフランスは大きなクルマを小さい排気量で動かす風潮にあったから、最新のC5の1.6リッターも結果的に"フランスの伝統"っぽさが濃厚である。

 シトロエンというと、日本では"変態マニア御用達?"が定説だった。サスペンションのみならず、各部のデザインがことごとく日本的価値観ではとっつきにくかったからだ。C5でも最初は奇妙なだけにしか見えない部分も少なくないが、そのどれもが合理的な実利につながっていて、すべてが「人間がいかに気持ちよく快適か」に昇華している。

 筋金入りのマニアも納得する"シトロエンらしさ"と、世界共通で"いい乗り心地=いいクルマ"と評せる味わい......の2つのツボをここまで見事に両立したシトロエンC5は、ちょっとした奇跡の名作といっていい。


【スペック】
シトロエンC5セダクション
全長×全幅×全高:4790×1860×1470mm
ホイールベース:2815mm
車両重量:1620kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1598cc
最高出力:156ps/6000rpm
最大トルク:240Nm/1400-3500rpm
変速機:6AT
10・15モード燃費:10.2km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:399万円

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