宮司愛海アナと内田嶺衣奈アナが語ったフィギュア中継の心得と難しさ。「印象深いのは髙橋大輔選手のシングル競技最後のインタビュー」 (2ページ目)

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

【生中継インタビューの難しさ】

この記事に関連する写真を見る宮司 私たちが中継で担当しているのがリポーターとインタビュアーということになるのですが、インタビューに関しては特に、何回やっても難しくて慣れなくて、やっぱり他の競技とは違っている部分を感じています。内田さんは、インタビューの難しさや面白さはどのようなところにあると思っていますか? 

内田 インタビューは、最初に担当した時から今までずっと難しいと思い続けていて。勝手はわかってくるし、経験値も増えていくけれど、正解が見つからないものだったりもするし。あと、私たちが選手にお話を聞くのは演技が終わった直後、点数が出るキスアンドクライからインタビューエリアに来るまでの1分あるかないかぐらいの時間。演技と結果を見てから何を聞こうかというのを考えてまとめる時間がそこしかなくて。

宮司 点数のことも踏まえて聞かなきゃいけないですからね。

内田 そう。キスアンドクライから移動してくる間に、脳みそをフル回転させていつも準備している感じ。マイクや機材の準備や、立ち位置の確認もしなくてはいけないので、演技後はバタバタだね。

宮司 だから、実は演技はほとんど生では見られないんですよね。スケートリンク裏のモニターで見ていて。会場内から歓声は聞こえてくるのですが、基本的に生ではあまり見られないですよね。

内田 生中継の時は時間の管理にも追われているからね。

宮司 選手の返答が何秒で返ってくるかもわからないですしね。そこを管理しながら質問の数を考えて、イヤモニ(※イヤーモニター。スタッフからの連絡が聞こえる)に入ってくる時間のカウントに合わせてインタビューを締めていくという作業で。それが一番しびれますよね。

内田 「今、(時間)延長が決まったからちょっと延ばして」という指示も時にはくるので、締めかけたことを言ったけど、もう一問質問するとか。

宮司 追加で聞く感じですよね。

【何をポイントにインタビューするのか】

内田 やっぱりその選手のことを下地として知っていないと、どんな質問をしてどの質問を減らすか増やすかという判断もできないので、私たちリポーターやインタビュアーは、見えないところでの自分自身の準備みたいなものがすごく問われる競技だなと思う。宮司は、何を一番ポイントにおいてインタビューしているの?

宮司 その選手がそのシーズンに大事にしていることだと思っています。たとえば、あるジャンプに初めて取り組むシーズンだったら、そのことについてより深く聞こうかなとか。演技を見ている段階からそこに注目していますね。その選手がどういうことを課題にして、どういうことを目標にしているのかというのを、一番中心に考えています。

内田 大切なことだね。あと私が担当年数を重ねたからこそ思うのは、選手を見ていた時にいつもと違う行動が出た時の質問かな。いつもだったらこういうウォームアップをしているのに、今日は全然違う動きをしているなっていう時は、何か心境の変化だったり、試合に臨むなかで違いがあるわけで。それを聞いてみると「実はこういうことがあって、こういう思いが強まっていた」ということが出てきたりもするし。そのためにはとにかくアンテナを張り観察。選手をすごく観察しています。ウォームアップや6分間練習の時の様子とか、リンクインする時の表情とか。

宮司 朝の公式練習もそうですよね。ちょっと調子が悪そうだったのに立て直してきたとか、そういうストーリーが1日のなかにあったりしますしね。自分なりの観察力と、選手が大事にしていることとを融合させている感じです。

内田 それをギュッとしたもののなかから、選び取って実際に質問をして。でも「こっちの質問もやっぱり聞きたかったな」って思うこともあるよね。

宮司 すごくありますね。

内田 中継全体の尺との兼ね合いもあり「短く」という指示が入ってくることもあって。

宮司 そうそう。もっとゆっくり聞けたなら......という時はもちろんあります。

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