宮司愛海アナが振り返る東京オリンピック・パラリンピック。問い続けた「スポーツが伝えられることとは」 (2ページ目)

  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

【過去一番の注目度だったパラリンピック】
 続いて、パラリンピック。パラリンピックでも、競泳・鈴木孝幸選手の金を含む5つのメダルに、最年少14歳・山田美幸選手の銀メダル、車いすテニス国枝慎吾選手のロンドン大会以来のシングルス金メダル、男子車いすバスケの銀メダルなどなど......こちらも挙げきれないほどの印象深いシーンが多くありました。

 そのなかでも、個人的に記憶に残ったのは男子ブラインドサッカーの戦いです。念願のパラリンピック初出場で初戦のフランス戦で快勝すると、続くブラジル戦、中国戦を落とすも最終戦スペイン戦はしっかりと勝ちきり、初出場で堂々の5位入賞を果たしました。

 特に、スペイン戦で生まれたゴール。キャプテン川村怜選手のコーナーキックから黒田智成選手が合わせて決めた、各国の選手たちをして「大会史に残る」と口々に言わしめた奇跡のようなゴールです。ブラインドサッカーでは、視覚に障害がある選手たちがプレーするため、なかに鈴の入った音の出るボールを用いるのですが、このゴールはその音が鳴らないよう、ボールを宙に浮かせて放ったコーナーキックから生まれたのです。ゴールを決めたベテラン黒田選手は「空中に浮いている時に聞こえたかすかな音で、軌道のイメージができた」と話していましたが、緻密な練習があってこそ、そしてチームの想いがひとつになったからこそ生まれたスーパープレーでした。

 今大会、ブラインドサッカーは男子のみの開催でしたが、女子にも正確無比のシュートを武器とする菊島宙(そら)選手をはじめ、すばらしい選手がたくさんいます。次回は男女ともにピッチで戦う姿を見たいですね。

 ......と、数々の歓喜の瞬間があった一方で、悔し涙をのんだ選手の姿もたくさん目にしました。どうしてもメダルばかりに目が行ってしまいますが、メダルを手にした選手よりも、メダルに手が届かなかった選手のほうが多いのですよね。

「オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない」と話す選手もいるように、4年に1度しか(今回は1年延期により5年でしたが)、努力の報われる機会がやってこないというプレッシャーと、そこにかける思いの強さは想像を絶するものなのだと思います。

 どんな結果であれ、この舞台にたどり着いたことこそがすばらしいことなのだと、改めて心に留めておきたいです。

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